感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
10
大分県公文書館所蔵「昭和十五年監置精神病者に関する綴」を紐解く著者。四人兄弟中、弟二人が発症した事例。特に末弟は、大学医学部に入学し、得意満面だったが、花見の酒宴で乱れ、早発性痴呆に至ったという。二人は私宅監置という名の座敷牢に入れられ、二人の兄が監置義務者となる。当時、監置から死亡までの余命が平均六年四か月、三十代の死亡率が高かった。兄弟のその後は記されていないが、四人を覆う宿業に思いを馳せる。2019/06/13
sendagi1130022
1
私宅監置は無秩序・恣意的な監禁ではなく「精神病医学の水準・精神病対策に投入できるリソースが不十分な中で、どのように精神病者に対する公的対応を遂行するか」を江戸時代から檻入制度を継承し“発達”したと知った。まさに“おわりに”で島崎藤村の著が言うように「吾国の封建時代が遺して行って呉れたものの近代化」であった。衆知の呉秀三の私宅監置への批判も「精神病院入院による治療」を推進する立場からのもので、遅れた近代化を達成した我が国の宿痾と言え、これを現代の価値観で後付け的に批判するのは安易に過ぎると自戒した次第。2012/10/16
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