感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どぶねずみ
26
北風という厳しい生活の中にも、たくさんの希望とも言えるような想像が生まれる。それが谷内六郎の世界。これは谷内六郎の自伝書らしく、彼がどんな子ども時代を送ったのかが見えてくる。貧しい生活、クラスメートに負い目を感じていたであろう知恵遅れと小児喘息。自分のことを知恵遅れだと言っても、子どもでもなかなか想像できないようなメルヘンを作れる彼の才能は天才の域だと私は思う。貧しい生活は辛いことの方が多いけど、貧しいなりの楽しみ方も見えてくる。そんな状況をいつも子どもなりに楽しんでいたのかな。2019/11/28
ぶんこ
22
谷内さんが亡くなられた後、奥様が見つけられた自伝とも思われる物語。 小児喘息と軽い知恵遅れだったようで、小学校卒業すると働きに出ても、体調が悪くなっては転職を繰り返さざるを得ない日々。 貧しさの中で、差別も受けた日々を、淡々と子供目線で書かれてます。 ただ、編集者が何を考えられたのか、時系列に書かれてなく、小学低学年から、次は電球工場の工員といった具合で、とても読み辛かったです。 白黒の絵が所々に入っていて、これは絵本なのでしょうか? 2014/07/28
R
2
六郎さんの世界観が好きなんです。2011/11/24
toshiyk
1
著名な挿絵画家が、子供の頃の体験と心象を文章と絵にしたもの。「ちえおくれ」と自認し喘息に苦しむ自身の写し身を「虫郎」という名前にしていること、なのに小学校を出てすぐ働き出していること、病気や容貌を理由に侮蔑された描写と、生前に発表されなかった理由が推察される。ただし「現実はもっときびしいものでありました」とも書き残していたそうで、厳しかった現実をただ残したものではなく、著者一流のファンタジーたりえている。虫郎が現実の一端から空想を召喚し没入する様は、画風の源泉を教えており、読み手の童心をも喚起してくれる。2017/07/14