感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
32
版元は夏葉社。明治大学で日本文学を学んだ編者が選ぶ16の掌編。いまは韓国でひとり出版社「夜明けの猫」を起ち上げ、24時間営業の本屋も運営しているらしい。リトルプレスを連想させる作りだと思ったが、あとがきを読んで納得した。芥川龍之介「蜜柑」以外はおそらく初読。平林初之輔「悪魔の聖壇」と伊藤野枝「遺書の一部より」が強烈だった。山川方夫「箱の中のあなた」はいつか「世にも奇妙な物語」で実写化しそう(もうなっているかもしれない)。詩と彫刻に関する高村光太郎の捉え方は、本屋で肉体労働をしつつ小説を書く自分にも頷ける。2025/05/26
M H
18
ソウルでひとり出版社を営む人が編んだ日本近代文学の掌編集。文庫サイズの上製本でたいへん美しい本でもある。すべてが知らない収録作、未知の作家もいて新鮮さとともに甘美で悲しい情景や濃密な思いが広がる。どれも心に刺さるもので、敢えてあげるなら小川未明、伊藤野枝かな。収録作冒頭の一言問いかけ、あとがきともに印象深く必読。文学を読む意味は、あるよ。2025/07/23
二戸・カルピンチョ
17
パブリックドメインとなっている作品集なので、青空文庫などで無料で読もうと思えばそれもできるが、無料で読むお得さを上回る価値がこの本にはある。本はそれぞれの読者の本質を引っ張り出してくれる。編集のチェさんの心意気にも触れることができて大満足。2025/07/26
かもめ通信
16
文庫サイズの上製本で、品があって手触りもいい、夏葉社らしい美しい本は、いずれおとらぬ読み応えの近代日本文学16作品+αを収録して読み応えもたっぷりという充実した1冊。編者のチェ・スミン氏は作家であり翻訳家であるだけでなく、ソウルでひとり出版社を立ち上げて自ら翻訳した日本文学のリトルプレスを出版し、さらには独立系書店をも営んでいる方。収録作品のうち既読はなんと4作だけだったということもあってどの作品よりも長い編者あとがきを含めて十二分に楽しめた。2025/06/09
あのした
8
18編の近代日本の短編が読める一冊。名前は知っているけど、著作を一つも読んだことのない作家もいれば、初めて読む作家も多く収録されており、読み応えがありました。個人的に芥川龍之介の「蜜柑」、平林初之輔の「悪魔の聖壇」、牧野信一の「初夏」が印象的でした。もちろん他の作品も余韻や解釈の余地もあり、面白かったです。古い作品の入り口として読むのも良さそう。2025/08/01