内容説明
忘れ得ぬ人の記憶をたなごころですくい、そっと温めるように書いておきたい―地域雑誌『谷中・根津・千駄木』から出発した著者が、長年にわたり出会った人びとを回想するエッセイ集成。
目次
1 こぼれ落ちる記憶(もう一人のモリマユミ―西井一夫;朝の電話―藤田省三ほか ほか)
2 町で出会った人(木下順二さんのこと;谷中で戦争を語りつぐ会 ほか)
3 陰になりひなたになり(粕谷一希さんの支え;鶴見俊輔さんの遺言 ほか)
4 出会うことの幸福(上を向いて歩こう―永六輔;活字遊びと恋の転々―岡本文弥 ほか)
著者等紹介
森まゆみ[モリマユミ]
1954年東京生まれ。作家。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、1984年に仲間と地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊、2009年の終刊まで編集人を務めた。歴史的建造物の保存活動にも取り組み、日本建築学会文化賞、サントリー地域文化賞を受賞。『鴎外の坂』で芸術選奨文部大臣新人賞、『「即興詩人」のイタリア』でJTB紀行文学大賞、『「青鞜」の冒険』で紫式部文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
災害大嫌い美少女・寺
73
森まゆみの本を一冊丸ごと読んだのは初めてだった。本書は南陀楼綾繁さんによる、内田魯庵『思い出す人々』森まゆみ版を作ろうという企画で生まれた一冊。著者サイン本で拝読したのだが、流麗な字で「記憶をうけわたす」との識語がある。森さんが今までの人生で出会った(一部会っていない人もいるが)有名無名の人物たちの思い出の数々。まさしく文章による肖像である。これを読むと、幕末から令和までは一時代だなと思わせる。私が最近読んだ本の作者や出てきた人物も登場し、皆いい人で、永遠を少し感じた。識語の通り、確かに記憶を受け取った。2021/01/02
kokada_jnet
69
2020年刊行。町で出会った無名の人から、淡い交流があった知名人たち。映画祭や聞き書きなどの仕事で、濃厚な交際をした人まで。森まゆみの人生でふれあった人々のポートレート集。木村由花、黒岩比佐子、佐藤真といった夭折した人物への哀悼が、心に響く。「阪神間のお嬢様」と評される中世史家・脇田晴子も、私は知らない方だったが、気になる人になった。著者に日本雑学大賞を授賞した吉村平吉につき、「吉村さんて方は大学の教授ですか?」と受賞式できいて、「あの人は吉原の伝説のポン引きですよ」と教えられたというのが、いい話。2024/01/20
とよぽん
50
読み始めたのは今年の2月だった。何冊か同時進行で読んでいるため、結構小間切れで3か月に渡って楽しませてもらった。森さんだけど泉のように人が湧いてくる。その人脈の広さは計り知れない。鬼籍となった人たちへの敬愛、懐かしさ、感謝、ほろ苦い自責など、ユーモアを交えて森さん自身の来し方も振り返りながらのポルトレ。2019年に富山で講演を拝聴した時の、柔和で温かいまなざしがよみがえる。「文化とは記憶の継承であり、わたしはただ、上の世代と下の世代を結ぶ環(リング)に過ぎない。」という最後の文が見事だ!2021/05/24
団塊シニア
17
作者が今まで出会った人達、作家、詩人、思想家、芸人との人間模様をなつかしく憶いだしながら書かれたエッセイ、とにかく作者の幅広い人脈を感じる一冊である2022/01/02
ユカ
4
著者が出会った文化人たちとの交流の記録。興味がわいた人の名前をメモしながら読了。たくさん楽しみが増えて嬉しい。須賀敦子、坪内祐三など好きな人の話も読めて嬉しかった。2022/05/14