出版社内容情報
ナショナリズム研究の新古典。増補版に書き下し新稿「旅と交通」を加えた決定版。アンダーソンのゼミで原著執筆時共に研究議論を重ねた最適訳者による翻訳。なお、本書は、2008年9月23日付『毎日新聞』朝刊読書面にて「ちょうど10年ごとに同じ編集者の手を経ながら、それぞれ別の版元から出た点にも運命的な面白さを感じます(一)。」と温かい言及を頂いています。
目次
1 序
2 文化的根源
3 国民意識の起源
4 クレオールの先駆者たち
5 古い言語、新しいモデル
6 公定ナショナリズムと帝国主義
7 最後の波
8 愛国心と人種主義
9 歴史の天使
10 人口調査、地図、博物館
11 記憶と忘却
旅と交通
著者略歴
ベネディクト・アンダーソン
1936年昆明に生まれる。コーネル大学名誉教授。
訳者略歴
白石隆(しらいし たかし)
東京大学教養学部卒業。
コーネル大学(歴史・アジア研究)、京都大学、政策研究大学院大学教授を経て、現在、内閣府総合科学技術会議 議員。
白石さや(しらいし さや)
国際基督教大学教授。
京都文教大学教授を経て、現在東京大学教授(教育学研究科)。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
72
民族主義あるいはナショナリズムは自分が学生だった1970年代までは「解放」とセットの著作、つまり「革命的」なものが多かったが、本書はそうしたドグマから距離を置いた名著と思う。前世紀末、ソ連崩壊とその後の旧ユーゴスラヴィアの戦乱期に多くのナショナリズム論が出ているが、東南アジアをフィールドとしている著者は、ヨーロッパ的視点に対し論争を挑んでいく。民族が血ではなく意識によって形成される過程を言語や出版も絡めて丁寧に論じている。ラテンアメリカのクリオーリョに注目しているのは慧眼と言うしかない。丁寧な訳が嬉しい。2024/09/08
マエダ
62
理論的混乱が見られる国民と国民主義の概念について、本書では「国民」を「想像の共同体」と捉え、想像の共同体が人々の心のなかにいかにして生まれまた世界に普及するに至ったのかが書かれている。ナショナリズムを知る必読の一冊。2019/01/10
ころこ
46
ナショナリズムは古く、固有の内在的なものに由来すると考えがちだ。しかし本書は、メディア論として新しい外部の装置に発見した近代的な考え方であり、普遍的な現象であるものの固有性は無く、その現象の射程には普遍性とは相いれないという転倒が見事だ。装置として本書では、俗語である公用語、小説の三人称、出版資本主義、クレオール役人といった新たなメディアが論じられる。これらは人々に均質な空間に共に所属しているという意識を生み出す。興味深いのは小説の三人称がそうであるように、神のような超越的な視点と、ある特定の人物に感情移2023/07/06
ころこ
43
天皇制が見出され近代に生まれたように、ナショナリズムとは近代意識のアイデンティティです。タイトルがミスリードしているのか、国家は想像の共同体に過ぎないと読んでしまうようです。メディア論として出版資本主義による言語の統制を考察したり、出版資本主義を下部構造、近代意識を上部構造と読み替えて、マルクス史観の影響を考察したりする方が有意義な気がします。時間論もマルクス史観です。著者はマルクス主義に批判的にもかかわらず、まさにマルクス史観通りに歴史を読み解いています。しかし、想像だと強調することができるのも、俗語よ2019/04/10
livre_film2020
32
「国民」は想像された共同体である。宗教や王の権威が地に落ちた結果、出版資本主義が媒介となって「国民」という共同体が生まれた。よって、「自分は〇〇人」とみんな当たり前のように今信じているが、実はそれは近年に作り上げられた幻ということになる。この想像の共同体により、植民地支配はしやすかったとのこと。なぜなら、本国と植民地という概念を作り上げ、本国をトップとしたヒエラルキーを作り、出世したくば本国を目指せと植民地のエリートたちに信じさせ、支配を固定化したからだ。だが、実際、植民地のエリートたちは本国に行っても2023/08/23