出版社内容情報
宇能 鴻一郎[ウノ コウイチロウ]
著・文・その他
七北 数人[ナナキタ カズト]
監修/解説
著者等紹介
宇能鴻一郎[ウノコウイチロウ]
1934年、北海道札幌市生まれ。本名鵜野広澄。家族4人で、東京、山口、福岡、満洲国(現中国東北部)撫順、長野県坂城と移り住み、満洲国奉天にて終戦を迎える。福岡県立修猷館高校から東京大学教養学部文科二類に入学。修士課程在学中の1961年、仲間たちと創刊した同人誌『螺旋』掲載の「光りの飢え」が『文學界』に転載され、これが芥川賞候補となる。次作の「鯨神」が翌年1月に芥川賞を受賞。以後おもに性を主題として新しい文学を切り開くが、文壇では正当に評価されず、1971年から徐々に女性告白体の官能小説に軸足を移した。歴史小説、ハードボイルド、推理小説でも独自の世界を築いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
37
宇能ワールド全開な「甘美な牢獄」を読んでうなる。この作家は、こんなもんじゃなかったはず。その哀れなまでのエゴと露悪的な表現を極限までつきつめていたら、受け止めることのできる活動場所があったら、この陰惨で引きこもり的な民族を代表する作家のひとりになった気がする。彼のポルノ小説を見下しているのではない。この作家のぞっとするような言葉をもっともっと昇華させることのできなかった日本文学という枠組みに失望しているのだ…。2023/01/06
スリカータ
11
有名らしいが、私は初読の作家さん。一時代前の日本や満州を舞台にした短編集。繋がっている話もあった。官能が全面に出るというよりは、思春期の少年の内面の葛藤や不合理さが印象に残った。表題作が一番良かった。人間というものの不可解さを、この文字数でスパッと描くのは凄いですね。2024/02/03
Junichi Watanabe
4
#読了 。宇野鴻一郎が官能小説に軸足を移す前に執筆した至極の短編集。少年のリピドー、蠱惑的ユートピア、美人コンプレックス、白人コンプレックス、マゾヒズムなど、誰もが持っている内に秘めた感情を巧みに描き出している。表題にもなった「甘美な牢獄」と「官能旅行」が良かった。2022/10/26
メイロング
4
宇能鴻一郎で解説が七北数人は、ちくま文庫「猟奇文学館」三部作の延長戦じゃん。これ読みたかったやつ!と求めていた宇能欲を満たしてくれたのは、「殉教未遂」「狂宴」「甘美な牢獄」あと「雪女の贈り物」もいい。なんでこんな凄みを持つ作家が埋もれているのかずっと疑問だったのを、解説が解説してくれている。というか埋もれすぎてて調べようもなかった。七北さんありがとう。まだ象の話が読めてないから、どこかのアンソロジーにいれて出してください。2022/10/08
リプリー
2
今回も素晴らしかった。 特に一話目。彼女の母親とホテルで二人きりになって…からの展開は活字で久しぶりにグッと来た。 戦時中から敗戦後の台湾を舞台にした2作は新鮮で、特に野生の蛇は、宇能さんらしい性の目覚めもありながらサスペンスとしても一級。 これで現在紙で手に入る宇能さん作品は全部読んだことに…。電子版に手を出すか…。2024/04/02