感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三柴ゆよし
29
作者は中上健次の同人誌仲間で、『十九歳の地図』に出てくる「かさぶただらけのマリアさま」のモデルになった人だという。メニエール氏病と精神の不調を抱えて書き続け、「髪の花」で群像新人文学賞を受賞するが、1973年に服毒自殺。腐乱した遺体は、死後半年経って発見された。中上健次の慟哭に満ちた追悼文が残っている。「シリーズ 日本語の醍醐味」のなかではおそらく最も知名度の低い作家だと思うが、ではなにゆえ彼女が、藤枝静男や金子光晴といった日本語表現の極北に位置する作家と同列に並べられているのか、一読すればすぐわかる。2020/04/23
いやしの本棚
15
わたしはシルヴィア・プラスもアンナ・カヴァンも二階堂奥歯も共感しながら読んだが、小林美代子は彼女らとは違う。もっとどうしようもない。どうしようもなさのレベルが違う。彼女らの作品には、カリスマのような魅力がある。小林美代子にはない、何もない。「健全な頭も、若さも、自由も、肉親も、経済力も」。「蝕まれた虹」「髪の花」に描かれた孤独と絶望は、全きものであって、何の粉飾もない。悲しく、惨めで、みっともない。憧れる要素などひとかけらもない。これが心を病むことの真実だろうと思う。2020/09/11
多聞
8
表題作と「幻境」がよかった。「髪の花」は入院していた頃を思い出して読むのが苦しかった。収録作の質が高く、もう少し生きて執筆を続けることができたら、よりよい評価を残すことができたと思うので、虚しさを覚えた。2020/07/18
to_chan
6
短編集。冒頭の表題作。主人公が辿り着いた場所の暖かさ。悲しい…いや悲しくない…うーん、悲しい。サブカルでもファッションでも露悪でもない狂気。著者の名前含め全く予備知識なかったので読後に調べたら、ああ……。 「みんなに大切にされたわ。人間になるとこんなに幸せになれるのだな、と思った」2025/08/16
さえきかずひこ
2
『蝕まれた虹』、『幻境』は良い。2014/08/17