内容説明
街はひとつのテクストである。都市を歩きながら、人はただその表層を眺めるのではない。文献を通じ、想像力を通じ、他者の記憶を通じて、その街角の異なる相貌を幻視してもいる―深層に息づく声たちによって立ちあがる新しい風景。時空を超える紀行文学的都市論!
目次
プロローグ コンデサ―美しい時代
1 アナワク―空気の最も澄んだ土地
2 ソカロ―地下から溢れ出る詩情
3 トラテロルコ三文化広場―血塗られた広場
4 テペヤクのグアダルーペ聖母聖堂―傾くキリスト教文明
5 メルセーからテピートにかけて―愛すべき隣近所
6 コヨアカン―嘆き声が聞こえてくる街
7 サン・アンヘル―幻のトラムに乗り換えて
8 セントロ―冥府の詩が聞こえる
エピローグ 書物と図書館―テクストの都市を旅する
著者等紹介
柳原孝敦[ヤナギハラタカアツ]
1963年鹿児島県名瀬市(現・奄美市)生まれ。東京外国語大学大学院博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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トッシー
6
その土地について書かれた様々な文献を読んで現地を歩くと、想像がふくらんで、見えないものが見えたり聞こえない声が聞こえたりして、新しい風景が立ちあがる…。私自身そんな経験をしたことがあり、とても面白かったです。まさに「時空を超える紀行文学的都市論!」。メキシコDFには住んだことがあるので、懐かしくてたまらなかったです。ポエジー(詩情)をもっと感じられる人間になりたいなと思いました。引用文献もどれも興味深いものばかりでしたが、ボラーニョの『野生の探偵たち』と鶴見俊輔の『グアダルーペの聖母』はぜひ読んでみます。2021/05/04
鉄善
1
メキシコDFを舞台とした小説や史料を読み解きながら街を歩くことがこれ程面白いのかと思った。石造りの街故に何世紀も前の建造物や街並みが残されている故なのだろう。トータルで12年も住んだ街だけに、描かれているほとんど全ての場所に行った記憶があるのだが、ブカレリ通りからレフォルマを超えてゲレロ通りに入る街並みは雰囲気は想像できるものの明確な記憶はない。今度訪れた時には是非行ってみたい。 書中の地図ではソナロッサがインスルの東になっているが、西ではなかったか。2021/08/11
Ñori
1
シティの歴史の重層性を文学テクストを参照しながら、自らの経験とともに読み解くエッセイ。この都市の奥底に眠る深淵から醸し出される妖気は、いくら外国人がコンデサを牛耳ろうが健在である。セントロの街角に立ち込める空気、テピートの違法路上居酒屋でビールをあおるときに見るアイツらの面構え、メルカドのバイタリティ。長く住んでるけど全く飽きない。歴史的蓄積の厚みの上で、直近の歴史の表層的つまらなさは、「空気澄み渡る土地」の乾いた太陽によって干からびる。僕はメキシコで骨をうずめるんだろうな、と思う。2021/02/27
Kan T.
0
コンデサにAirbnbしてたときに持っていたかったな。2021/05/01