内容説明
「世界のなかに私が住むこと。そして世界のなかに書物が存在すること。この二つの事実の偶然の関わりをめぐる、限りある消息をさまざまに探究することが、本書のテクストとして再現された講義の目的であった―」。本という物質的存在のゆらぎをたえず傍らに感じながら行われた画期的な書物論、全14講。
目次
はじまりの書物―アルドゥスに倣いて
無限と円環―ボルヘス「砂の本」
書物の迷宮―ボルヘス「バベルの図書館」1
焚書の想像力―ボルヘス「バベルの図書館」2
口誦から文字へ―ボルヘス『ボルヘス、オラル』
砂漠と書物―ジャベス『書物への回帰』
ユダヤ人、詩人、亡命者―ジャベス『問いの書』
書物のゆらめき―ページネーション考1
手稿から頁へ―ページネーション考2
理性の森に降り積もる雪―ベンヤミン「本を読む子供」
ページに掛かる蜘蛛の糸―ベンヤミン「幼年期の本」「学級文庫」
摸倣、交感、墨書―ベンヤミン「摸倣の能力について」
触覚と幼年期―ベンヤミン「字習い積み木箱」
月形の角をもった、動じない牛―グリッサン「世界の本」
著者等紹介
今福龍太[イマフクリュウタ]
1955年東京生まれ。文化人類学者・批評家、東京外国語大学大学院教授。遊動型の野外学舎「奄美自由大学」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gu
7
裏返しの身体性とも言えそうなボルヘスの作品に始まり、なんとも感動的なベンヤミンの記憶をめぐる省察、そしてグリッサンの「モンド」へ。読むことと書くこと(のはじまり)にどれだけ肉体(と切り離せない感覚)が駆動されているか。本の物質性と可塑性、目と耳で模倣して生まれる言葉(文字)。身体で書物に触れて思考する時、書物を通じて世界に触れて思考できるのだと思う。本の原料になる植物についての論考も読んでみたかった。2016/05/16
むぎ
3
文体はエッセイ的だけど、各章で扱ってる一次テクストやそこから派生するテーマが割と学術的だったりするので、正直思ったより読みにくかった。筆者インスタとか好きそう。とりあえずベンヤミンの「1900年頃のベルリンの幼年時代」という文献の存在を知れたのは良かった。ほか、気になったキーワードとしては、書道教育やら、エスニックマイノリティと図書館など。2019/02/10
aur0ra
2
書物という知の集積体が持つ魅力をあらゆる角度から照射していこうとする講義録。ボルヘス、ベンヤミン、宮沢賢治、グリッサンなどのテクストを詳細に読みつないでいくさまは見事。中でも、模倣の能力として「言葉」をめぐる章は示唆に富む。2010/03/31
つまみ食い
1
現代においてメディアとしての地位を脅かされている書物について、その歴史を俯瞰した上で書物について思考し著作、作品を残したジャベス、ベンヤミン、ボルヘスといった文学者の論考を紹介しその著作の精読も行う。2021/09/27
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