内容説明
平戸港の一画にあったオランダ商館は、大航海時代を象徴する日本最初の洋風建築だった。石造三階建の堅牢な建物は、完成後、わずか二年で幕府によって完全に破壊されてしまう―。それから四世紀。いま商館はふたたび壮麗な姿を現した。復元のための緻密な発掘調査、国内外史料の猟渉と研究を重ね、その全容がほぼ明らかになった。
目次
1 オランダ東インド会社
2 三浦按針の活躍
3 松浦隆信
4 商館長クーケバッケルとマニラ・マカオ侵攻計画
5 鎖国と商館破壊
6 商館跡の発掘調査
7 平戸オランダ商館の復元
著者等紹介
萩原博文[ハギワラヒロフミ]
1949年、松浦市生まれ。平戸市教育委員会和蘭商館復元推進室長として平戸オランダ商館の発屈調査・研究に従事。現在、平戸市教育委員会学術専門幹(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
89
VOC(オランダ東インド会社)は世界初の株式会社、多国籍企業。 その支店が平戸にあったのは1609~1641 復元されたてだった平戸オランダ商館で買ってきて積読してたのを読む。 太い木の梁が印象的だった。 平戸良いとこ2020/12/02
まーくん
84
読友さんのレビューで本書(03年刊)を知りました。06年に平戸を旅したが、読んでから訪ねたかった。著者は平戸市職員としてオランダ商館の発掘調査・研究に携わり、復元計画にも尽力。商館は11年復元されたとのこと、是非再訪してみたい。この建物は初の洋風石造建築として威容を誇ったらしく、島原の乱平定を終えた松平伊豆守信綱も立ち寄り検分している。後に目付らの詳しい報告を受けた将軍家光は、商館の威容は幕府の権威を損なうものと判断、側近の大目付井上政重を上使として平戸に派遣し破壊を命じた。オランダ商館は長崎に移される。2020/12/29
パトラッシュ
42
江戸時代に長崎の出島でオランダと通商していたのは有名だが、その前は平戸が拠点だと知らない人が多いだろう。まして、そこに日本初の洋風建築が建てられながら、長崎へ貿易拠点が移される過程で消滅したとは。オランダが対日貿易を独占できたのはキリスト教を布教しなかったからと単純に考えていたが、実際にはタイオワン事件など日蘭関係のごたごたが背後にあったことを教えてくれる。長崎貿易には宗教のみならず貿易の利害や将軍家光の政治的思惑、当時の欧州各国の外交までが絡んでおり、歴史の理解は一面的な見方では無理だと認識させられる。2021/01/05