内容説明
「海ゆかば」「海道東征」「沙羅」…数々の名作を残し、東京音楽学校教授として数多くの後進を育てた作曲家・信時潔(1887‐1965)が、戦後、武者小路実篤の呼びかけで参加した同人誌『心』に寄せた音楽随想・座談を集成。バッハ、ベートーヴェン、バルトーク、カザルスら大音楽家たちへの敬慕、そして「海ゆかば」への思い―。日本楽壇の礎となった作曲家の素顔が蘇る。
目次
バッハ小感
松江行
ベートーヴェンの音楽―その特質と普遍性について
ゲーテの音楽観
つゆどきの花
私の洋楽遍歴とバッハ
「無題」
「音楽一夕話」
農民音楽の近代音楽への影響―ベラ・バルトークの音楽論
聴覚を失ったベートーヴェンが何故作曲出来たか〔ほか〕
著者等紹介
信時裕子[ノブトキユウコ]
武蔵野音楽大学(音楽学専攻)卒業。卒業論文として「信時潔作品目録」を試作。以後、信時潔関連の資料整理と情報収集、目録整備を続ける。2005年、ウェブサイト「信時潔研究ガイド」を開設。以後執筆や講演の機会が増える。08年、六枚組CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』の企画・構成、解説執筆を担当した(平成20年度文化庁芸術祭大賞受賞)。財団法人日本近代音楽財団「日本近代音楽館」に二十余年勤務し、閉館を機に退職。現在、昭和音楽大学附属図書館勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hr
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戦後の座談会で「新しいものについてもっと知りたい」と言葉にする信時潔。LPレコードについての話が出て、LPが世に出た頃まで健在だったことは信時には幸せだったろうと思う。バルトークを「エモーションのある方」、ワーグナーを「あんな逞しい人は一寸おりません」、エルガーを「大陸へ持って行けば二流作家」と述べるなど、当時の日本での情報量の少なさは差し引かないといけないが、信時の他の作曲家への評価が窺い知れることは興味深いし、彼の音楽観を想像できる。絵画にも造詣が深く、僕の信時のイメージに一つ別の要素が付け加わった。2018/03/03