出版社内容情報
ベストセラー『下流志向』のウチダ教授がハルキ・ワールドの秘密をついに解きあかす!
村上春樹はなぜ世界中で読まれているのか? デビューから『アフターダーク』までを貫くモチーフとは? なぜ文芸批評家から憎まれるのか? 村上春樹が発する倍音とは? 雪かき仕事はなぜ世界を救うのか? だれにも書けなかった目からウロコの村上春樹論登場!
【目次】
極東のアヴァター~『羊をめぐる冒険』と『ロング・グッドバイ』/すぐれた物語は身体に効く/『冬のソナタ』と村上春樹/霊的な配電盤について/フランス語で読む村上春樹/太宰治と村上春樹/倍音的エクリチュール/うなぎくん、小説を救う/なぜ村上春樹は文芸批評家から憎まれるのか?/村上春樹とハードボイルド・イーヴル・ランド/ハーバーライトを守る人/100パーセントの女の子とウェーバー的直感について
【著者紹介】(うちだ・たつる)
1950年東京生まれ。神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、武道論、映画論。著書に『街場の中国論』(ミシマ社)、『逆立ち日本論』(新潮選書・養老孟司との共著)、『下流志向』(講談社)、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)ほか、多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
54
作者があちこちで村上春樹について書いたものを集めてまとめたもの。総じて、村上春樹を批判する批評家に苦言をていし、彼の作品を理解する上でのファクターを説明する。うなぎ、朝御飯、決定的に欠けているもの、等々。作者の内田さんをもっとよく知りたくなった。彼は大変に博識で、難解なことを噛み砕ける人のように思う。彼が手放しでほめる加藤典洋氏の批評も読んでみたい。2014/02/02
おさむ
49
先日、またもノーベル文学賞を逃した際、ハルキストの1人が「毎年集まってハルキの良さを共有できる」ので、ずっと受賞して欲しくないと語ってましたが(笑)、内田センセイのハルキ愛も筋金入りです。僕の住む世界で僕や愛する人は邪悪なものの介入により繰り返し損なわれる。この不条理な出来事のほんとうの意味は最後になっても明かされない。「この世には意味もなく邪悪なものが存在する」事を書き続けるのが村上春樹の小説の永遠のテーマという解釈は最も適格なハルキ評だと思います。2016/11/01
mura_ユル活動
40
ここへ来て読メの方から村上春樹さんと内田樹さんの本のオススメあり手に取った次第。本書は、内田さんご自身のパソコンで「村上春樹」で検索し、関連するテクストをまとめたもの。両者、歳で一つ違い。読む限り、内田さんは村上さんのファン。びっくりしたけど、ノーベル文学賞受賞のヴァーチャル祝辞から始まる。うなぎ説や朝食のシーン集は面白い。村上さん、こんなにも文芸批評家から批評をされていることは知らなかった。「書評は「食欲」をそそるものであるべき」と。村上さんは『何かが欠けていることを感知せしめる卓越した技術』の持ち主。2013/09/28
さきん
27
村上春樹の作品は何作か読んでみたが、乾いて軽く、哲学的なテーマやメッセージを感じにくいので長編まで辿りついていない。また、熱狂的な盛り上がりをみせるので、また落ち着いてから読もうかなと思って後回しになってしまう。村上氏のランニングと小説との結びつき、いわゆる身体を重視する姿勢や小説に取り組むスタンスが雪かきや家事と捉える感性が著者の合気道とフランス哲学の両立と重なるところがあり、育児しながら農業する私にも響くものがあった。あのあり得ない展開が軽く描かれる意図は、小説にしかできないことを表現したいという2025/04/18
みなみ
20
村上春樹の作品では、「幽霊が出る」場合と「人間が消える」場合がある、という解説に確かにと納得。村上文学での「朝ごはん」の物語論的機能やフランス語で読む村上春樹など、切り口が独特で読んでいて新鮮だった。「かえるくん、東京を救う」で、ほんのわずかな善意と献身的な日常の努力が、宇宙の秩序や平和を下支えしているという仕事観は、自分も持っておきたい。2024/11/18