内容説明
人間国宝に認定され、九十歳まで現役として舞台に立った三代目尾上多賀之丞は、脇役で、小芝居役者と差別された家の出である。その階級社会に生き、負けてまるかと腕を磨いた多賀之丞の生涯は、得意と失意とが交差する波乱に富んだものだった。女形・名脇役の生涯。
目次
第1部 評伝編(ビタと呼ばれて―尾上多賀之丞;一時代早かった―尾上菊蔵)
第2部 日記編(昭和三十年代;昭和四十年代~五十年代)
著者等紹介
大槻茂[オオツキシゲル]
1945年生まれ。株式会社「広報戦略研究所」代表。青森大学客員教授。1969年4月、読売新聞社入社。社会部、生活情報部、週刊読売編集部などに所属。「RFラジオ日本」に出向後、2000年7月、新聞監査委員を最後に退社。2002年ワールドカップで、高秀秀信・横浜市長(当時)の要請により決勝戦開催都市・横浜の広報活動を展開。2002年7月、株式会社「広報戦略研究所」を設立、危機管理と広報のコンサルティング業務を始める。そば、歌舞伎関連の雑誌の編集も手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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牛仮面
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ようやく読み終えた。 詰まらないのではなく、読むのに脳味噌を働かさねばならなかったからで、この日記には鬱憤の類があまり書かれていない。知識を動員して紙背を見ようと思わず力が入ってしまった。 最近は人形に興味が移った理由はここにあるよなあ、と得心を重ねる。 日記らしく、当時の出張の鉄道の話やあれこれの街の様子がしのばれるのも楽しい。 いまの前の明治座の7月興行で、大川の川開きの花火の音が場内に聞こえてしまうので早々に切り上げてはねた、というのが、そうであったか、とも、さもありなん、とも思えて興味深い。2014/05/05
みつひめ
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結構、菊五郎劇団の幹部についての「え!?」な記述が日記に出て来て、びっくりしましたw。伝説の名人たちと同じ舞台で共演してきた人からみると、そういう評価になるのか…。山田五十鈴さんと当代菊五郎さんは、たくさんの役を教わっていたんですね。2011/01/24
クリイロエビチャ
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公開を前提に書かれた日記ではないので、興味深いが面白みには欠ける。また、本人の日記なのか著者の注釈なのかわかりにくいところもあり、構成が良くないと思った。前編の評伝の方をもっと読みたい。家柄や出自による差別の生々しさ。脇の名優たちが自分の子供を役者にさせないことに、彼ら自身が受けてきた仕打ちがしのばれる。2010/12/30
石橋
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著者の目は梨園の封建的構造に批判的だが、多賀之丞自身はどこからか達観してネクストステージに上がっている印象。当時の風俗誌としても面白い。2019/05/02