内容説明
移民の集まるベルリンの病院の集中治療室で生死の定かでない人たちを訪ねてまわるマリア。振り返る人生はどれも後悔や不条理に満ちているけれど、患者たちとマリアの会話から少しずつ共感の糸が見えてくる。越境するロシア語劇作家が織りなす言葉が新たな空間の共有へと向かう。
著者等紹介
チラーキ,イリヤー[チラーキ,イリヤー] [Члаки,Илья]
1959年、モスクワ生まれ。劇作家としてデビューした直後の1991年からドイツのベルリン在住。作品はドイツやアメリカで先に評価され、最近はロシアでもペテルブルクのバルチックドーム劇場で定期的に上演されている。チェーホフと同様、人間の死や人生の不運・失敗を「喜劇」にした作品が多い。1996年からドイツ作家同盟会員。2008年より国際ロシア語作家連盟(2005年にミュンヘンで創設)会員。50作以上の戯曲(モノローグ、一幕物、二幕物)が英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語などに訳され、イギリス、ベラルーシ、ブルガリア、ドイツ、アメリカ、フランスなどで上演されている。本名イリヤー・チラーキシヴィリ
高柳聡子[タカヤナギサトコ]
福岡県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。同大学大学院文学研究科ロシア文学専攻博士課程修了。文学博士。専門はロシアの現代文学、女性文学、ジェンダー史。現在は早稲田大学などで非常勤講師としてロシア語、ロシア文学を教える(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ののまる
5
ふたつめの戯曲の主人公の男性のクズさが、徹底していて笑う。2023/02/13
mick
2
久々の戯曲は面白かっただけでなく、新鮮な構成も楽しめた。死と生のはざまの時間という中で、人生の良かったことも辛かったことも、その一瞬一瞬が浮かんでくる。2019/11/07
nightowl
1
集中治療室にいる人々の悲喜こもごも。一場が終わると次の人物に変わるのでメインのマリア以外は名前を覚えなくてよい翻訳作品苦手な方にもやさしいお話。様々なタイプの人々がいるのでどなたかの話は気に入るはず。併録されている「独楽、あるいはそんなことありえない」は最近度々上演されているレイ・クーニー作品の骨子を取り出したような戯曲。四人の女性と付き合う男性の元へある日彼女たちが次々部屋へ押しかける修羅場。定番展開ながらも安心して笑って読んでいられるコメディ。2019/12/25