著者等紹介
コヴェンチューク,ゲオルギイ・ワシーリエヴィチ[コヴェンチューク,ゲオルギイワシーリエヴィチ] [Ковенчук,Георгий Васильевич]
1933~2015。レニングラード生まれの画家、エッセイスト。早くより「ガガ」の愛称で親しまれた。ロシア・アヴァンギャルドの旗手ニコライ・クリビンを祖父に持つ芸術一家の出。ロシア芸術アカデミー付属美術大学で学び、挿絵やポスターで多数の賞を獲得したが、自由な画風が災いしてソ連時代は不遇だった。ソ連崩壊後はユニークな絵が国の内外で評価され、展覧会も多数開かれるようになった
片山ふえ[カタヤマフエ]
大阪外国語大学ロシア語科卒。ムーザ文化交流協会代表。様々なイヴェントを通じて国際交流に努めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリリン
38
読み進めながら脳裏に浮かぶ情景が絵画のように美しく心穏やかになる。時代背景や生活が垣間見える作品からは、陰鬱さが漂うものの不思議と暗さは感じない。当時を振り返るような著者の視点が穏やかで優しい。特に「レニングラードの暑い夏の日」と「かもめ」は心に深く浸透する。幸せという言葉は似合わないはずなのに、この作品に出会えた幸せを感じる不思議な読了感。人生で一番辛く悲しかった日々を経て、当時を振り返り綴ったエッセイは甘く芳香な味わいがある。激動の時代すらこのような形に昇華させる芸術家の魂を感じた。2023/03/14
空猫
37
画家のガガ氏による、ソ連にあったコムナルカに住んでいた頃のエッセイ。コムナルカとはアパートの様な共同住宅だが、かつてホテルだった建物。これが表は豪華なままだが、裏では元客室を分割、長屋同然にし、便所も台所も共同でしかもエレベーターも無い6階建ての、リアル「貧ぼっちゃま」な住宅。'6-70年代の、市井の人達の様子がよく分かる。他、海辺の村に移転した頃の思い出話も。カモメの話は自身の死生観か。貧しく辛かった時代。人間愛に溢れつつもどこか冷めた視線でつらつらと語られた一冊。2023/07/26
Nobuko Hashimoto
31
革命前に建てられた豪奢な建物を小分けに改装した、ソ連の共同住宅コムナルカでの60年代の日常を綴ったエッセイ集。キッチン、トイレは10世帯ほどが共同で使う。お風呂は公衆浴場へ。キッチンには常に誰かがいて、おばあさんたちが住民の動向をあれこれ詮索する、昔懐かし濃いご近所づきあいを、さらっとユーモアのある文体なので微笑ましく読ませる。/ 今はこうした共同住宅は激減したらしいが、近所づきあいや割安な住まいを求める人に一定の人気があるらしい。ノスタルジーを喚起させる場としても注目されている模様。見学したいな。2022/01/02
きゅー
17
著者が20年ほど暮らしたペテルブルグの共同アパート(コムナルカ)での出来事を綴ったエッセイ集。彼が住んでいたのは、かつて裕福な人が住んでいた居住スペースを何個にも分けた小さな部屋。ときにはとんでもない事件も起こるし、意地悪な人々もいるけれど、この狭っ苦しいアパートには人間的な情味が溢れている。この雰囲気、ユーモアは本当にロシア独特のものだ。自虐的なんだけど、カラッとしていて後腐れがない。彼らがそこで生き、煤やほこりと一緒に吸い込んだ空気がページから立ち上るかのようだ。2017/02/16
ポテンヒット
15
図書館でふと目に留まり、借りてみたら大当たり。著者がコムナルカと呼ばれるソ連時代の共同アパートで暮らした頃の住人の話。ロシアの小説にこのような住宅が時々出てくるが、本書を読むと様子がよく分かる。トイレ・台所が共用・風呂ナシの古い学生寮を思わせるアパートに家族単位で老若男女、時々ネコが暮らしており、喜劇もあれば、悲劇もある。彼らに比べれば遙かに便利で困難の少ない自分の生活より、彼らの人生の方がずっと濃密に感じる。挿絵は画家である著者によるもので、不思議なタッチに味がある。2023/02/12
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