チャパーエフと空虚

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  • サイズ B6判/ページ数 459p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784903619040
  • NDC分類 983
  • Cコード C0097

内容説明

その男の名は「空虚」。どこでもない場所でからっぽの時間にくりひろげられる存在のない物語―。

著者等紹介

ペレーヴィン,ヴィクトル[ペレーヴィン,ヴィクトル][Пелевин,Виктор]
1962年、モスクワ生まれ。20世紀末のロシアで新進作家として登場して以来、絶大な人気を誇り、国外からも熱い注目を浴びつづけている現代作家。発表される作品はいずれもベストセラーを記録し、「ロシアの村上春樹」ともいわれる。1991年に出版された最初の短編集『青い火影』は数日間で完売、ロシアで最も権威ある文学賞ロシア・ブッカー賞で異例の受賞をはたした

三浦岳[ミウラタカシ]
1976年生まれ。早稲田大学第一文学部露文専修卒。編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

25
面白いです。どちらが夢でどちらが現実か分からない現代ロシアの精神病院と、ロシア革命の赤軍とを行き来しながら物語が進みます。これに他人の夢などが混じったりして、シュワルツェネッガーと結婚したり、へんてこ日本文化を経験したり、ユンゲルン男爵とユングがごっちゃになった人物が出てきたり、大いなる虹の奔流に飛び込んでみたりと物語はどんどん混迷してきます。全体に独特の軽さ、明るさがあって、「すべてがものすごい軽さで変化する」夢から夢へと渡り歩くのはとても楽しい体験でした。2つの世界が交わるような終り方もよかったです。2016/04/12

三柴ゆよし

23
語り手ピョートルと謎の男チャパーエフによって繰り広げられる、存在 / 非存在に関する哲学問答がかなりの頁を占めてはいるものの、筋書きとしては、あることないことごた混ぜの日本イメージが語られていたり(当のペレーヴィンは日本文化に精通している模様)、アメリカ的正義の象徴としてのアーノルド・シュワルツェネッガーがミサイルぶッ放したりするドタバタ喜劇なので笑いながら読める。特におもしろいのは謎めいた前書きの存在によって、非在の世界において語られる世界の非在の物語としての位置が保証されていることだろう。傑作である。2012/09/22

em

18
「空虚」の名を持つピョートル・プストタの夢と現実。あてもなく溢れ続ける思考、行き過ぎて切れたような笑い。実存を追いかけてどこまで箱を開いても、中身は空っぽ。「どうすりゃ思いきりびびってんのに、心底愛するなんてできんのか」。恐れつつ愛するという心の深掘りは、神とスターリンを連結してしまう。「永遠のハイ」に入ったニーチェは”捕まった”のだという絶妙な皮肉。ロシアと日本の奥底には同じ空虚が広がっているというカワバタの言葉は、ロシア的感覚に惹かれる日本人をからかっているようでもあり、一層好きになってしまう。2018/02/13

ヘル・Wの空中庭園

5
面白かった。仕事に差し支えるのも構わず、睡眠時間を削って一気に読んでしまった。村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』がロシアの地でドストエフスキーと出会い絶妙に科学反応おこした作品という印象で読んでたら、最終的な現実と非現実、あるいは現実と狂気のつながり方として『サルガッソーの広い海』に近い感じの出口が広がっていて素敵だった。それは過去の小説からいいとこだけ取ってるって意味では決してないのだけれど、語彙が貧困でこの面白さをうまく説明できないのが悔しい。2010/05/24

Risako Nagata

3
内戦時代のソヴィエトと現代のロシア。重なるはずのない世界を行ったり来たり、世界の実現性をひっくり返すようなストーリーに振り回されながら向かうところは「空っぽ」。そこには無を定義する人間はもちろん無を指す言葉すら存在しない。濁流のような比喩に溺れてチャパーエフの禅問答に首をひねり、シュワちゃんやらカワバタやら変な展開に笑いながら読むうちに、この本に書かれた言葉も自分や他者の存在も、全部があやしくなってくる。今これを書いている私も、果たして実在していると言えるのだろうか。だとしたら私とは一体、何なのだろうか?2019/10/31

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