無限とはなにか?―カントールの集合論からモスクワ数学派の神秘主義に至る人間ドラマ

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 344,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784903532615
  • NDC分類 410.9
  • Cコード C0041

内容説明

無限とは何かという問題は2500年にわたり人類にとって深い謎であった。19世紀末にドイツの数学者ゲオルグ・カントールは、集合論によって無限に新たな解釈を与えた。同時に様々な矛盾の存在が明らかになり、数学者達は進展をとげるには厳しい状況に置かれた。この無限についてフランスの数学者(ボレル、ベール、ルベーグ)はデカルト的な合理的解釈を試みたのに対し、モスクワ数学派は「讃名派」の教えに関連する神秘的で直観に基づいた解釈を試み、独自の進展をとげた。本書は、20世紀初頭に無限と集合論に挑んだ数学者、特にロシアの数学者を中心に描いている。数学的対象に対する解釈をフランスの数学者と対比させることで、モスクワ数学派の無限や連続性、集合に対する解釈の独自性が明確になっている。著者らは本書の執筆にあたり綿密な調査をおこない、あまり知られていない20世紀前半におけるモスクワの数学者達の活躍や苦悩、生涯を、共産主義による制圧といった当時の時代背景や思想との関わりを含めて詳述している。数学だけでなく、思想や歴史に興味のある方も楽しめる一冊である。

目次

第1章 修道院襲撃事件
第2章 数学の危機
第3章 フランスのトリオ―ボレル、ルベーグ、ベール
第4章 ロシアのトリオ―エゴロフ、ルジン、フロレンスキー
第5章 ロシアにおける数学と神秘主義
第6章 伝説的なルシタニア
第7章 ロシアのトリオの運命
第8章 ルシタニアのその後
第9章 数学における人間過去、そして現在
補遺 ルジンの個人的な文書

著者等紹介

グレアム,ローレン[グレアム,ローレン][Graham,Loren]
現在マサチューセッツ工科大学の科学史教授。著名な科学史家であり、ロシア・ソヴィエト科学史に関するさまざまな著作で知られている

カンター,ジャン=ミシェル[カンター,ジャンミシェル][Kantor,Jean‐Michel]
現在、パリ第6大学(Institut de Math´ematiques de Jussieu)に在籍。数学者から転身した数学史家

吾妻靖子[アガツマヤスコ]
北海道大学法学部卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ピリカ・ラザンギ

3
集合論に寄与したソビエトの数学者に的を絞った数学の歴史書。数学的な式などは一切出てこず、本書の主眼が数学の内容ではないことを示している。カントールの示した無限にフランスの数学者はデカルト的解釈を試みたが、ロシアは宗教色を含んでいた、という対比の描写から始まる。主要なソ連の3人の数学者D・エゴロフ、N・ルジン、P・フロレンスキーの内、P・Fは司祭の道を選んだ。ソ連の知識人への弾圧下での研究と、信条のなかで数学者は悩み、そして無限論を推し進めた。数学者を絶対視しない清濁併せた視点で書かれていて好感が持てる。2013/12/28

工藤 杳

2
フロレンスキー本。数学と神秘主義と同性愛。讃名派について日本語で読める本は得がたい。 訳者はロシア語の専門家ではなさそうだけど、ほとんど違和感なく読める。勉強されたのだと思う。2017/10/11

EnJoeToh

2
原題、"Naming Infinity: A True Story of Religious Mysticism and Mathematical Creativity"。讃名派とソヴィエト数学。主に評伝。2011/11/21

gkmond

1
副題のほうが内容にはふさわしい。期待したものといささかずれたが、取り上げられている人々の人生は興味深かった。2014/11/14

とある科学者

0
仏と米の数理哲学・数学史研究者達による、20世紀初頭を主題とした仏・露の数学比較論。現在数学王国と言えば特に仏・露・米だが、米の哲学と比べて日本等では知られていない仏・露(特に露)の数学者達の「哲学」に焦点を当て、見事な比較まで行っている名著。但し、例えばルベーグ達と後のブルバキスト達との比較さえ載っているのに、何故カルタン親子の名前すら出てこないのかについては、恐らく、話が少し逸れディープになる為だろう。この様に、多少初学者向けには感じた。因みに、可述主義が叙述主義とされたり、専門用語等の訳ミスが少々。

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/4200802
  • ご注意事項

最近チェックした商品