王安憶論 - ある上海女性作家の精神史

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  • サイズ A5判/ページ数 230p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784903316499
  • Cコード C3098

出版社内容情報

王安憶(1954-)は上海有数の知識人家庭に生まれ,1949年に誕生した“新中国”とともに生きてきた。その文学には,社会主義を究極的に実現しようとした文革期に多感な青春期を過ごし,文革終息後ようやく本格的に作家として歩もうというときに天安門事件に直面し,自己に内在する社会主義の理想の相対化を迫られた文学者の苦悩と葛藤が刻まれている。本書は王安憶の1980,90年代の文学を,当時の中国の社会・文化背景をふまえて読み解くことで,時代の刻印が深く押されたひとりの文学者の精神史を明らかにするものである。

目次

はじめに

第一部 「新時期文学」の躍進と挫折のなかで 一九八〇年代と王安憶
第一章 王安憶と「尋根(ルーツ探し)」
 一 問題としての王安憶と「尋根」
 二 訪米体験と「尋根」 
 三 「尋根」議論の興り
 四 「小鮑荘」をめぐる問題 
 五 王安憶の「尋根」とその創作
 六 「尋根文学」と中国の八〇年代 
第二章 「私」の書く八〇年代 「おじさんの物語」(一九九〇)論
 一 天安門事件の衝撃
 二 意味をもたない物語
 三 「私たち」の錯覚 
 四 「おじさん」と「私」の挫折 
 五 「おじさん」を超えて

第二部 文学者アイデンティティの模索の中で 一九九〇年代前期の王安憶
第三章 「作家」から「小説家」へ 小説学講義(一九九三)を中心に
 一 講義の問題意識
 二 「仕事」としての小説創作
 三 「心霊世界」としての小説
 四 『ノートルダム・ド・パリ』に見る「心霊世界」
 五 『百年の孤独』に見る「心霊世界」
 六 文学者アイデンティティを探しあぐねて
 七 新たな文学者アイデンティティのなかで 
第四章 一九九〇年代初期の王安憶小説 『紀実と虚構』(一九九三)を中心に
 一 創作の背景
 二 小説の構成
 三 「私」のルーツの物語
 四 「私」の成長物語
 五 文学の「権力」
 六 「知識分子」への「懐念」 「ユートピア詩篇」との比較において

第三部 「上海」をめぐって 一九九〇年代後期の王安憶
第五章 王安憶の「上海」 『長恨歌』(一九九五)を中心に
 一 都市小説としての『長恨歌』
 二 『長恨歌』の受容とその背景
 三 『長恨歌』に見る「老上海(オールド上海)」 
 四 「生活の美学」
 五 「老上海」の死
 六 王安憶の「上海」
 七 原風景としての「上海」
第六章 「西洋」の追求 「ビルを愛して」(一九九六)論
 一 「ビルを愛して」受容における問題 
 二 「西洋」イメージの形成 
 三 「西洋」への執着と「世界」
 四 贖われなかった「罪」
 五 「西洋」を超えて
第七章 王安憶のユートピア 『富萍』(二〇〇〇)を中心に
 一 発見された風景
 二 『富萍』に見る上海郊外の風景
 三 富萍という生き方
 四 『富萍』の背景 一九九〇年代末の中国
 五 王安憶のユートピア
 六 原風景としての一九六〇年代

おわりに
あとがき
初出一覧

【資料】
王安憶主要作品雑誌掲載目録(一九七八-二〇〇〇)
王安憶略年譜
参考文献
索引

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感想・レビュー

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Heyryo Motoyama

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小説家の著書によりその小説家の精神史を掘り下げていく。中国という国の文化の変遷も著書の精神に影響し小説に表れていると。小説というものは文字で精神世界を作ってしまうという偉大なものであると再認。オリジナルな小説が書ける作家は自分の精神がその著書にでてしまうものなのか。2017/06/23

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