感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吟遊
10
リンギスの本領が垣間見える。ノイズの世界に耳を傾け、いや、体を浸し、あらゆる人間以外のものの声を享受し、喜びを覚え、そしてその感覚は死につながる、とリンギスは言う。2019/08/15
Sakana
7
読書ノートを書くために再読。合理性に回収されてしまうもの、そのプロセスの中で取捨されてしまうもの、そこで零れ落ちる様々な事柄を拾い上げようとする試み。それは例えば、コード化された言語という合理的なプログラムだけでは伝わらない、表情や仕草、リズム、まわりの雑音、涙声や叫び…だったりする。「生きるということは、物がだす振動に共鳴するということなのである」というリンギス。「生きていること」、「死ぬこと」、そして「他者とは」を、本源的に、そしてラディカルに問うてくる。でも読んでいて心地いい、とても優しい本だった2018/05/03
ふるい
6
"私たちは、私たちの死すべき運命において自分自身を知る(p.200)" すべての人や物が交換可能な合理的社会を"撹乱"する共同体とは、何人とも交換不可能な死すべき運命を負った他者の共同体であるという。世界中を旅する著者リンギスの撮った写真と、旅先でのエピソードが思索を補強しており、印象深い。2022/03/01
竹薮みさえ
5
一日でざっと拾い読み。かつてわたしはこう考えていたなと思う。ちゃんと読めてるのかどうかしらんが。しかし、受苦を受苦だとはおもわなくなった。身体性というのは共振してしまうもので、それはただ苦ではないよ、と今のわたしはいいたい。それをまだ苦といってしまうところに合理性の共同体にひきずられてる感じがした。そうでないと受苦という贈与は成立しないでしょ。いや、実感として誰かを感じることは苦でないよ。2013/02/02
れどれ
4
かなり難解で、一言一句の意味は読み取れても、文と文と連なりからなる意味の集合体の実像はなかなか結べない。恥ずかしながら解説文に相当助けられた。しかし表層だけさらってしまってはあまりに勿体ないほど、本文は詩的な発熱まで引っ提げて、実体の虚ろな他者論の実体じみたものを説いてくれている。たまにこの手の難文も読まないと脳が衰弱する気もするし、また挑戦しよう。とはいえ全体を丁寧に丁寧に追わないと論考を整理しきれないから再読には本当体力使う。このさき自分の中の主題が合致する時期もあるだろうから、その瞬間が読み時か。2021/03/31