出版社内容情報
d47 MUSEUM 企画展「Fermentation Tourism Nippon – 発酵から再発見する日本の旅 –」の公式書籍。
2018年夏、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんは、日本の発酵文化をリサーチする、8か月間の旅に出ました。
本書は、小倉さんが47都道府県の山・海・島・街を巡って、酒・味噌・醤油はもちろん、知られざる発酵の現場を取材した記録です。
発酵食品は、その土地の味覚や暮らしの記憶が保存されたアーカイブ。
多種多様な日本の発酵食と、それらが生まれた背景を、疾走感ある文章で紹介しています。
例:イモに千の手間をかける、島のサバイバル食品「せん団子」
捕鯨一族が生んだ発酵珍味
謎の発酵くずもち
火山島の野生菌の焼酎
ほか
●著者 小倉ヒラク
1983年生まれ。「見えない菌の働きを、デザインを通してみえるようにする」ことを目指し、東京農業大学醸造学科研究生として発酵を学びつつ、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。アニメ「手前みそのうた」でグッドデザイン賞2014授賞。著書に『発酵文化人類学』(木楽舎刊 2017年)。hirakuogura.com
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きみたけ
82
思ってた以上に面白い内容でした。著者は発酵デザイナーの小倉ヒラク氏。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、日本各地の発酵文化を訪ね歩いた旅行記。味噌、醤油、酒、漬け物など、日本各地の醸造家や生産者を訪問し、発酵文化を生で学び、味わうだけでなく、それを育んだ景色と人から文化的背景を掘り下げることに力点をおいています。意表を突かれたのは徳島の「阿波藍」、染色が発酵と関係あるのが意外でした。地元の富田の酒や守口漬けの紹介もあって、満足度の高い一冊でした。2023/07/02
アキ
64
発酵食品を求め、日本全国を旅して廻る。数百年もの間受け継がれてきた驚くほど多様な発酵文化。北海道から九州まで種類がかぶらず、ルーツに忠実で景色と人にフォーカスして実に28もの発酵食品をピックアップ。食の記憶というのは時系列の記憶ではない。子供の頃に体験した味わいは、今この瞬間に甦る感性の記憶。歴史と気候と文化とで生み出されたその土地土着の味。そこに微生物に耳を傾ける人たちがいる。われわれも微生物の気泡のようにその土地で暮らし時が来たら土や水の中に消えていく存在。今日も発酵食品を食べて、自然の中で生きよう。2019/08/07
けんとまん1007
61
発酵=身体に優しいという印象がある。日本の食は、発酵のおかげで成り立っていると言ってもいいのではと思う。味噌汁、漬物に限らず、いろいろな場面で支えていてくれる。読んでいるだけで、あれもこれも食べたくなってくる。やはり、その場に根差したものだからこそ、今まで残っている。そんな中、大型の木桶の話は、福井の知人で味噌屋をやっている人からも聞いていたので、身近に感じた。地元富山の黒作りや、新潟のかんずりが取り上げられているのが嬉しい。2020/07/18
かっぱ
47
【図書館】まず表紙の写真に何をやっているところだろうと気を引かれる。その正体は、新潟県妙高の「かんずり」と呼ばれるここにしかない発酵食品で、唐辛子を雪に晒し、それをもう1度、樽に漬け込んで3年ほど発酵させた雪国ならではの発酵調味料。本文にも書かれていますが、モコモコ着ぶくれのお姉さんたちがカゴを持って真っ赤な物体を淡々と白い雪の上に撒く姿は、おとぎの国の小人たちの儀式のよう。日本全国の発酵食品の多さには目を見張ります。保存食として生み出されたものが大半ですが、日本酒を始めとして随分と恩恵に授かっています。2019/07/31
Y2K☮
44
「発酵」を考察する旅の記録。日本酒や味噌などの作り方も勉強になる。本場京都のしば漬けに興味津々。私も食欲がない時の漬物&お茶漬けに何度も救われた。群馬の焼きまんじゅうと和歌山の金山寺味噌も気になる。あと対馬のせん。サツマイモは10度より寒くなると腐ってしまうらしい。気仙沼の「あざら」の話も覚えておく。小林よしのり「天皇論」から学んだことと重なる。大切なのは様式への固執ではなく発想とコンセプトの理解。内なるエートスを体現する形は時代に即して柔軟に変わってもいい。その上で新しい役割を創造することで文化を守る。2021/03/26