出版社内容情報
●足跡を追う
生涯12万体の仏像を刻む大悲願をかかげ、造仏行脚を続けた江戸時代の僧・円空に惹かれた筆者が、その足跡を追って北海道の洞窟から東北、関東、岐阜、愛知県内などの寺院や神社、奈良・大峯山中などを尋ね、円空の実相に迫る。筆者は産経新聞大阪本社文化部の記者。任地でナマの円空仏に接し、円空仏のとりこになり、産経新聞大阪夕刊で33回にわたり「円空を旅する」を連載。本書はこれに加筆した。さらに円空の研究を進めている哲学者・梅原猛氏の「円空と私」、円空学会の長谷川公茂理事長の「円空歌集からみた円空の思想と信仰」を掲載。
●異相の仏たち
ノミ跡も荒々しい円空仏は、岐阜、愛知を中心に北海道から東北、関東など現在、5200体以上が発見されている。大木から仏像を刻んだときに出た木屑、木っ端をも刻んだ円空。阿弥陀如来、薬師如来、十二神将、不動明王、護法神像などいずれも荒削りなのに繊細、ぶっきらぼうなのに神経が行き届いている仏たち。「どこかやさしさが漂い、見ているだけで心がいやされていくような気がした」(筆者あとがきから)ように、その滋味あふれるほほ笑みに癒され、惹きつけられるファンは多い。本書はカラー口絵をはじめ、魅力ある円空仏の写真を多数掲載している。
目次
第1章 みちのくへ(異相の仏―生涯、12万体を彫る;伊吹山―洞窟、奇岩、薬草の山で;北海道・太田権現―勾配40度、延々と階段 ほか)
第2章 大峯山修行(奈良・法隆寺―仏像の原点に戻るために;奈良・笙ノ窟―菅原道真、源実朝ゆかりの霊場;奈良・弥山―栃尾観音堂に「空海の一夜彫り」 ほか)
第3章 弥勒の浄土へ(栃木・中禅寺湖畔―将軍交代、激動の関東へ;栃木・日光山―弁覚ゆかりの地で冬篭り;埼玉・観音院―169体岐阜に次ぎ全国3位 ほか)
著者等紹介
冨野治彦[トミノハルヒコ]
昭和21年12月、名古屋市生まれ。大阪外国語大インドネシア語学科卒。45年、産経新聞入社。徳島、大津支局をへて、大阪本社社会部。夕刊フジ、サンケイスポーツ文化報道部次長、産経新聞岐阜支局長の後、文化部へ。平成14年1月から、夕刊1面でシリーズ「日本人の祈り」を担当、円空のほか、修験道、大峯山同行ルポ、一休、一遍の生涯などを取材
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