内容説明
山尾悠子と交換日記のように交わされた人形と小説、その記憶。小鳥の侍女、薔薇色の脚、―全作収録。
目次
小鳥たち、風のなかの(山尾悠子)
中川多理(小鳥たち;薔薇色の脚)
夢みる爪先のパヴァーヌ―『薔薇色の脚』に寄す(清水良典)
『薔薇色の脚』に寄せて(金原瑞人)
顔を手に入れる(川野芽生)
制作ノート 少女と鳥についていくつかのこと(中川多理)
著者等紹介
中川多理[ナカガワタリ]
人形作家。埼玉県岩槻市生まれ。筑波大学芸術専門学群総合造形コース卒業。DOLL SPACE PYGMALIONにて吉田良氏に師事。札幌市にて人形教室を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Valkyrie
11
中川多理の感性で具現化された「薔薇色の脚の踊り子たち」の写真集。完成形だけでなく、普通の少女が下半身が極端に肥大化し上半身はミイラのようにやせ細ったグロテスクともいえる「薔薇色の脚」に変わっていく過程の人形もあり結構キツい。この写真集とセットで「新編 夢の棲む街」となるんだろう。金原瑞人の「原作を裏切った極上のパロディ」に納得。5頁と短いけど山尾悠子「小鳥たち、風のなかの」も収録されている。以前パラボリカ・ビスで見た中川人形の中で異彩を放っていた「小鳥たち」の老大公妃人形は山尾邸に安置されているそうな。2023/05/18
ゆう
8
山尾悠子の作品に登場する人物が人形として与えられた。解説者は三人いるが、中でも川野芽生の解説が秀でているように思えた。山尾悠子の作品の登場人物は皆記号のような存在で、読者は人物の顔を想像することもできない。しかし中川多理は、物語のなかでは微かな影のような人物たちに身体というよりも存在そのものを与えたのだというような解説だった。私も人形の写真を初めて見たときは、彼女たちに個性があることに戸惑った。それほどに記号化されていた存在だった。山尾悠子の作品を超えた人形たちだと思う。どの子も素晴らしかった。2023/03/05