内容説明
寡作で知られた伝説的な作家が、『飛ぶ孔雀』で泉鏡花文学賞、日本SF大賞、芸術選奨文部科学大臣賞と三冠を達成。彗星のようなデビュー、ジュブナイル・歌集・翻訳の魅力、冬眠からの目覚め、鏡花・人形との縁…最新作『山の人魚と虚ろの王』を含む作品群にあたらしい光をあてる永久保存版。豪華執筆陣による多様な読み解き、自ら明らかにする作歴、書きおろし「年譜に付け足す幾つかのこと」+近作掌篇「『薬草取』まで」「薔薇色の脚のオード」収録。
目次
エッセイ
photo
評論
chronological table
地霊と言霊
はじまりの頃
人形の縁
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
47
恥ずかしながら、山尾悠子の密かなファンである。 だが、実は、まだ一冊も読んだことがない。 そんな訳で、この本を手にしたのだ。 そんなファンがいるものか!と言われても、実際ファンなのだから仕方がない。 本だって、『ラピスラズリ』、『歪み真珠』、『白い果実』(翻訳)、『飛ぶ孔雀』、そして本書と、既に5冊も持っている。 何故だろう? まず、どうしようもなく書名に惹かれてしまう。 『ラピスラズリ』、『歪み真珠』、『飛ぶ孔雀』ときたもんだ。 2021/04/05
くさてる
21
ムックかな?と軽い気持ちで手に取ったのだけど、読み応えたっぷりな内容で大満足です。年譜、作品紹介、インタビュー、エッセイ、評論や、掌編、所蔵の人形紹介まで、山尾悠子のファンなら楽しめること間違いなし。特に自作や文学賞にまつわるエッセイの筆致が実にのびやかで楽しく、鋭くて面白かった。休筆期間のことや昭和のSF文壇での扱いなど、色々と察せられる部分もあって興味深かったです。ときに難解と言われることも多い作品への理解も深められた思い。良かったです。2021/09/18
ゆう
20
「夜想」山尾悠子特集号。評論の他、年譜、ご本人のインタビュー、掌編を収録。どれも情報量が多く、一生懸命読みました。多くの方が仰っていることですが、川野芽生によるラピスラズリ評が抜きん出て面白く、こちらを読めるという一事だけでも購入に値します。本書でどなたかが初期作に漂うファルスの匂いについて言及されていましたが、休筆期間を経ての山尾悠子さんの快進撃と川野評で書かれた内容には相関関係があるように思いました。山尾さんの読者を自称できるほどの力量のない本読みですが、これからも、何度でも魅せられて、挑み続けます。2021/05/15
あ げ こ
19
かの膨大さ、あまりにも多くのものを内包している事、言及される事のない場所にさえ確かに存在していると感じる事、その正しさと奥行き、読み尽くしてしまう事の不可能さを思い知る読書であった。〈これを読まずして、山尾悠子を語れない〉どころか、読んで一層、山尾悠子を語る事が困難になったように思える。読む度にいつも覚える、今自分が目にし触れたものは、完成された世界の、その膨大な内の、ほんの一部でしかないのだ、と言う感覚。その感覚が決して間違いではなかった事を確信させられるような。かの世界、かの構造の、複雑さと美しさ…2021/03/25
ふるい
15
山尾悠子と同世代のデビュー当時を知る世代や、『作品集生』『ラピスラズリ』からの新世代のファンである作家や編集者による評論・エッセイ、詳細な年表やインタビューなどなど、盛りだくさんでとても楽しめた。とくに川野芽生のフェミニズム&シスターフッドの視点から『ラピスラズリ』を読み解く評論が素晴らしく、あらためて再読したくなった。2021/04/14