感想・レビュー
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いやしの本棚
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小鳥や花樹に焦点を合わせて描写された風景を見つめているうち、小鳥や花樹に自分が見つめ返されることとなる。詩人による散文のおそろしさ。帯文はエミリ・ディキンスンの詩の一節。文中に引用されてもいる。真っ白の装幀は、ディキンスンへのオマージュでもあろうか。「不安は感覚のなかで最も鋭く、生の根源に関わっているという。なべて生とは、不安に満ちたものであるのだから。/水は足もとで、生の不安を生の実感として現し、水音にふるえる岸辺にわたしを残したまま、不断に澄みきって流れ去る。」―95ページ 2019/03/21