感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴィオラ
8
キプリングの、インドを舞台にした短編集。キプリングならでは?のリアルな手触りのインドの描写は、非常に出来の良い異世界ファンタジーを読んでいるような体験だった。キプリングの短編を読んでよく感じる「読み終わってストーリーも掴んで、それでもまだ裏に何かが隠されている」ような、そんな体験が少なかったのは、書かれた時期とかが関係してるのかな? 直接関係ないんだけど、「獣のしるし」とか読んで思ったけど、キプリングが書いたホームズパスティーシュとか読んで見たかったなぁ…。2018/09/05
ヴェルナーの日記
2
イギリス人初のノーベル文学賞作家であり、フリーメイソンの会員でもあった著者キプリングであるが、その作品風は、良くも悪くも、パックス・ブリタリカを象徴しているものが多い。19世紀中ごろ~20世紀初頭にかけて、イギリスの植民地政策におけるインドの実情がよく描かれており、とても興味深い。インド社会におけるイギリス人のあり方、インド人から見たイギリス人たちの実情などが、ありありと浮かび上がってくる。イギリス人にとって異国における異端的な宗教観や、野卑な生活観を精緻なタッチで物語る作品群に圧倒される。2014/04/04
うにこ。
2
はー、濃厚で面白かった! インドものオンリーってことは乱暴に括れば初期作品ばかりってことで、そんな技巧に走ってなかったからってのもあるんだろうな。「ラクにて」「聖人プーランの奇跡」が大好き。「ラドヤード・キプリング―作品と批評」のメンバーが手がけた本なので、合わせて読むと更に面白い。しかし、この本は本当に埋もれちゃってるのね。つい最近出た本なのにアマゾンでももう売ってないし、ページ数のデータすらない…。bk1にはまだあったけど…いい本だからもっと広まって欲しいなあ。2010/10/30
うにこ。
1
「青い薔薇」で挙げられていた作品名&論考を見ていたら、むらむらと読みたくなったので! この、むさくるしーい男くさーいホモソーシャルな話たちがキプリングの短編だよなー。 今回改めて惹かれたのは「百の悲しみの門」「知られざる世界の記録として」かな。 「知られざる世界の記録として」のひねりにひねった具合はもう大好き。 ボルヘスの「アル・ムターシムを求めて」を髣髴とさせるね! いや、時代的には逆ですかね。ボルヘスの方が意識してたんですかね。こういう手法、大好き。2012/12/09