内容説明
一九六〇年、カリブ海にのぞむ美しい国―ドミニカ共和国。もうすぐ十二歳になるアニータのまわりには、不穏な空気がただよっていた。なかよしのいとこ一家は、逃げるようにアメリカに渡り、おじさんのひとりは、行方がわからない。そして、ある朝、秘密警察がやってきた―。独裁政権末期のドミニカ共和国で、自由をもとめる闘いを見つめた少女の物語。プーラ・ベルプレ賞(ヒスパニック系作家による、すぐれた児童書に贈られる賞)受賞作。
著者等紹介
アルバレス,フーリア[アルバレス,フーリア] [Alvarez,Julia]
1950年、ニューヨーク市生まれ。生後すぐに、両親の故郷ドミニカ共和国に渡る。十歳のときにアメリカに移住する。早くから作家を志し、1991年、ドミニカからアメリカに移住した四姉妹の人生を描く「How The Garcia Girls Lost Their Accents」でデビュー。2004年、本書「Before We Were Free」で、プーラ・ベルプレ賞(ヒスパニック系作家による、すぐれた児童書に贈られる賞)を受賞
神戸万知[ゴウドマチ]
翻訳家。ニューヨーク州立大学卒業。白百合女子大大学院で児童文学を研究する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
105
1960年代初頭、ドミニカ共和国独裁政権末期を生き抜いた少女の物語。そこは残忍な将軍の支配のもと秘密警察に監視され、些細な反抗でも一家丸ごと拷問・虐殺される暗黒世界。逃げる様に渡米する親戚、地下運動に身を投じる父、急転する身辺状況。作品自体は著者の親族をモデルとしたフィクションだが、監視に怯えながら隠語を交わし、生きているかもわからない父を待つ切実さは紛れもなく「証人」たちの生の声だ。厳しい環境にめげずに恋やおしゃれや日記を楽しむ春期少女の成長物語でもあり、凛とした清純さがある。自由の叫びそのものな一冊。2022/04/25
かもめ通信
20
「独裁政権末期のドミニカ共和国で、自由をもとめる闘いを見つめた少女の物語」は史実を元にしたフィクション。アニータの日記という形で綴られている点や、少女とその母親が他人の家のクローゼットに隠れて暮らすようになるくだりなど、アンネの日記へのオマージュのような構成にもなっている。めまぐるしく変わる政情を少女の視点のみで語るため、あちこちに脱線する余地があまりなく、少々堅くぎこちない印象は否めないが、緊迫感は十分で読みながらあれこれと考えずにはいられない。そうではあるのだけれど…。 2017/04/14
tellme0112
10
1960~61年、独裁体制下のドミニカを少女の視点から描く。何も知らされないまま、何か危険が近づいていく。隠れ家生活はドキドキした。アンネの日記を思い出す。本当に作者が経験したこと。日記が書けるとは、心までは縛れないということなんだなあ。心の回復までとはいかないけど、一人また一人とドミニカ脱出していく。最後は全ての真実が母親から話される。一人前扱いされて良かった…。これを、今の日本の子どもたちはどう読むのか。安倍政権がもし10年も続いたらを妄想してみた。2017/11/22
shoko.m
6
プーラ・ベルプレ賞をとってすぐ原書を手に入れたものの、ずっと積読のままになっていた作品。独裁政権が打倒される直前のドミニカ共和国に生きる少女アニータの物語を、政治に関心が弱い日本の子たちがどのように読むのか興味深い。2017/05/07
ぽけっとももんが
5
ドミニカ共和国といえば野球くらいしか知らない。同じ名前の国があったんじゃなかったかと調べて、ドミニカ国というのもあるのを再認識。その程度の知識しかなかったドミニカには、過去独裁者が支配した暗黒時代があった。親戚一同で仲良く暮らしていたアニータだが、いとこ家族はアメリカに移り、父やおじはトルヒーヨ大統領を暗殺し逮捕される。しかしアニータ家族は経済的に恵まれていたからコネを駆使することもできただろう。貧しい、その他大勢の人たちはどんな暮らしだったのだろう。2019/09/28




