内容説明
ロンドンの児童養護施設で育った、14歳の少女ホリー。里親になじめず、学校にも居場所を見つけられずに、いつか故郷のアイルランドにもどって、母親と再会する日を夢見ていた。ある日、ホリーは引き出しの隅にしまわれた、ブロンドのウィッグを見つける。ウィッグをつけると、鏡の中の自分はぐっと大人びて、最高にクールでゴージャスな女の子―サラスに変わっていた。里親のもとを飛び出し、アイルランドめざしてヒッチハイクの旅に出たホリー/サラス。いくつもの出会いをかさね、記憶のかけらをたどりながら、旅の終わりにたどりつくのは、夢に見たあこがれの地?それとも…。
著者等紹介
ダウド,シヴォーン[ダウド,シヴォーン][Dowd,Siobhan]
1960年、ロンドンのアイルランド系の家庭に生まれる。オックスフォード大学卒業後、PEN(国際ペンクラブ)で作家の人権活動などに携わる。2006年、デビュー作の「A Swift Pure Cry」でブランフォード・ボウズ賞を受賞。その後の活躍が期待されたが、2007年8月、四七歳で逝去。没後、書きためていた作品が刊行され、『ボグ・チャイルド』(ゴブリン書房)で、2009年カーネギー賞、ビスト最優秀児童図書賞を受賞
尾高薫[オダカカオル]
1959年、北海道生まれ。国際基督教大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
120
シヴォーン・ダウドがもう旅立っていて、これ以上作品を書けないことが残念でならない。こんなに語りかけてくる作品の書き手なのに。里親の所から家出をする14歳の少女の気持ちを分かってやろうよと大人には訴えかけ、傷つきた子供たちには荒れたっていいんだよとメッセージを送っている。いい子になんかならなくったっていい。子供がそばにいてくれること、そのことこそが大人の癒しになることが多いのだから。自分を捨てる身内の事を想いすぎる必要もない。Good boy, good girl は、呪縛の言葉なのかもしれないな。2021/01/09
モモ
38
児童養護施設で育った14歳のホリー。優しい里親に恵まれたが、ママの故郷アイルランドをめざし家出する。読みはじめはホリーの里親への言葉が酷く感情移入しづらかったが、途中からは一緒にロンドンからアイルランドまで旅する気分になれた。優しい理想のママから、どんどん事実の引き出しを開けていくホリーに心が痛む。最後にたどり着いた場所がホリーにとっての楽園だったのだろう。ダウドの作品をもっと読みたかった。2020/05/02
星落秋風五丈原
28
アイルランドに向かうフェリーの乗客の車に、こっそり乗りこむ場面からこの物語は始まる。ロンドンの児童養護施設で育った、14歳の少女ホリー。里親になじめず、学校にも居場所を見つけられずに、いつか故郷のアイルランドにもどって、母親と再会する日を夢見ていた。ある日、ホリーは引き出しの隅にしまわれた、ブロンドのウィッグを見つける。ウィッグをつけると、鏡の中の自分はぐっと大人びて、最高にクールでゴージャスな女の子―サラスに変わっていた。里親のもとを飛び出し、アイルランドめざしてヒッチハイクの旅に出たホリー/サラス。2022/09/02
yumiha
27
ロンドンの里親から家出し、産みの母親のいるアイルランドへ14歳のホリー(ヒイラギの意味)が、盗んだり万引きしたり嘘をついたりしながら向かう冒険小説、ガラの悪いのも14歳の一人旅には必要か・・・な~んて思っていたら、見事にひっくり返された。封印されていた酷い場面。ここがポイントだったんだ。シヴォーン・ダウトが、軽いわけはないわな。読み返すと、あちこちに小出しされている伏線。そこを読んだ時に、何かが引っかかったけれど、読み流してた・・・。里親や児童養護施設の友達やケアワーカーの声や姿がよみがえる。2017/10/05
ぱせり
9
旅をしながら、彼女のまわりから、いろいろなものが、はがれて消えていくようだ。何もかも失くしたら、ただのぬけがらになってしまうのだろうか。そんなことはない。彼女の求める理想郷が彼女の中に残ったような気がする。新たに本物のホリーが生まれる。そんなイメージを思い描いている。これがきっとほんとうの誕生の日なのだ。 2012/11/23