内容説明
旅先でたずねた、はじめての町。見知らぬ少年にさそわれて迷いこんだのは、しゅうぜん屋ばかりが並ぶ「しゅうぜん横町」!たんす屋、カード屋、人形屋、キスタ屋…大切なものにまつわる、不思議なエピソードがはじまります。
著者等紹介
西川紀子[ニシカワトシコ]
1943年、兵庫県生まれ。76年、「少女の四季」で第八回北川千代賞佳作。85年没
平澤朋子[ヒラサワトモコ]
1982年、東京都生まれ。現在フリーのイラストレーターとして活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
61
不思議でノスタルジックな雰囲気の漂う物語。異国の町を訪れた「わたし」は、修繕する店ばかりが並ぶ「しゅうぜん横町」に迷い込む…。たんす屋、鏡屋、人形屋…。店の主人がわたしに語る物語は時にはあたたかく、時には切ない。ああ、これは好み。何とも言えない魅力があります。次はどんなお店だろうとワクワクしながら読みました。2018/11/02
ぶんこ
45
異国を旅する女の子が、水飲み場で出会った男の子に導かれた先は「しゅうぜん横町」。88軒もの修繕屋さんが並ぶ不思議な横町。手仕事に興味のある女の子は、好奇心のおもむくままにお店へ入り、店主たちの手仕事と作品に魅せられます。私自身も女の子となって一緒に体験しているようでした。「キスタ屋の話」で、「キスタ」とは「化粧箱」の事で、それは素敵なキスタで、欲しくなってしまいました。こんな素敵な化粧箱だと、お化粧をするのが楽しいでしょう。断捨離に燃える今、考えさせられました。2018/11/18
neimu
41
「しゅうぜん(修繕)」という言葉を最近の若い人は知っているのかしら? 壊れた、破れた、折れた、切れた、穴が開いた、歪んだ・・・。まだまだ使えるはずのもの、思い出が一杯詰まっているもの、大切に受け継いでいきたいもの、作り手の思いが伝わってくるもの、ありとあらゆる品々を修繕する不思議な横丁に迷い込んだ女の子の不思議な1日。まるで自分がその世界を歩き回っているような、そんな気持ちで一杯になる。「もったいない」精神が謳われる世の中は、勿体ないの意味を知らない人が多いから。2018/12/04
neimu
37
物凄く読むのに時間がかかった。心の中の壊れた部分を修繕しながら、読み進んでいかないといけないようなプレッシャーがあった。一つの店に入る度に試されているような、叱られるような、未熟で物知らずであることを、粗忽なまま年を取ったことを責められているような、そんな気持ちにもなった。巻末に挿絵家のサインつきイラストがありビックリした。そう、これは読書メーターで知った本、読みたくて古本で取り寄せた本、作者は既に亡くなっている本なのだ。誰が手放し私のところにやって来たのか。修繕横町に私を招くために。2019/07/31
天の川
27
修繕してでも手元に置いておきたい品はその人にとって大切な物。狭い横町にひしめきあう88軒の専門修繕屋。熟練の修繕屋さんが語る修繕した品物にまつわる話は、可愛らしかったり、切なかったり、ちょっぴり怖かったり…それぞれの品物にぴったりとくるエピソード揃い(キスタ屋さんの話が一番好き)。主人公がなぜ一人で外国を旅しているのか、何歳ぐらいなのか(児童書だから子どもよね)…そんな情報がないまま、主人公とともにラビリンスに迷い込んでいく感覚。この設定は大人向けの本でも面白そう。2018/11/11