内容説明
まぶしすぎる予感。老詩人との出会いがぼくの“13歳の夏”をかえていく…。
著者等紹介
長薗安浩[ナガゾノヤスヒロ]
1960年、長崎県生まれ。南山大学卒業後、リクルート入社。「就職ジャーナル」「ダ・ヴィンチ」編集長などを務める。94年、「就職氷河期」のネーミングで流行語大賞特別造語賞を受賞。99年、「ウェルウィッチアの島」(「文學界」三月号 文藝春秋)でデビュー。02年より執筆に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶんこ
61
素晴らしかった。今年のベストワンかもしれない。人の出会いとは凄いものだ。13歳141センチの野球少年が整形外科の待合室で出会った詩人との交流が素晴らしい。「空や、雲や、花や、樹や、光が、ちょっとずつ違って見えてきた。」中1の野球少年が、ここまで感受性が豊かになっていくなんて。そして(カマブタ)と揶揄され、料理を愛し、心優しい智幸を「人が一生持つべきは、ああいう気のいい友だちだ。大切にしろよ」。胸がグッときました。純君も優しいし、この二人の友情は貴重だ。ちょっとした出会い。貴重だ。2016/08/31
こばまり
49
老いて病んでなお格好いい大人の男にしみじみシビれる。詩人村田さんは田村隆一氏がモデルの由。大好きな人とその人から教わったことを敢えて創作として残すのは、きらめきを閉じ込めるようで素敵だ。ついイカしたお爺さんになりたいと思ってしまったが私がこれからなるのはお婆さんだ。2017/02/22
はる
47
13歳の少年と老詩人との心のふれあい。13歳の純と病院でたまたま出会った老人村田さん。豪快でありながら知的な村田さんに強く魅了された純は、彼から多くのことを学びます。身体の悩みや異性のことなど思春期特有のモヤモヤが巧く描かれていますね。老人が少年に伝えたかったこと、そして少年が老人から学んだこと。静かなラストが印象的。2016/08/16
アナーキー靴下
41
13歳の野球少年が、怪我をきっかけに図らずも手にした休息期間で、老詩人と出会い、言葉と出会い、自分自身と出会うという、心震える物語。少年が成長してゆく様をこんなにも瑞々しく、論理的に表現できるのかと驚く。印象的なのは、少年が国語辞典で22個の言葉を調べるシーン。単にとりとめのない単語と意味を列挙しただけのページなのに、言葉それ自体がこんなにも意味を、即ち物語を感じさせるものだったかと圧倒された。ただぼんやりと雪を眺めるばかりで、雪の結晶一つ一つの違いなんて見ようとせず見えなかったことに気付くように。2020/12/13
ワッピー
37
読み友さんのコメントより。野球少年の純は捻挫・偏平足治療のために通っていた医院で、大柄な老人・村田と知りあい、家に招かれて、そこで言葉という新しい扉を開かれる。詩をきっかけに図書館で見つけた初恋、そして親友智幸とともに村田の家に通う日々、そして暗転…。村田が純のスクラップを見てから呼び方を変えたシーン、そして「とにかくおれを見ておけ」で自分のすべてをさらけ出す村田の覚悟のシーンには、涙が出てきました。時とともにやがて失われてしまう「輝ける日々の記憶」を明快な文章で描いた、鮮烈な出会いと別れの物語でした。2020/12/13
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