内容説明
オキナワ‐フクシマ、「内なる植民地化」をどう乗り越えるか。中央が周辺を犠牲にして強行する日本の経済発展そのものを問い直す。
目次
序 命を脅かす二つの聖域―安保と原発
第1章 安保はなぜ議論されないのか―安保聖域化の歴史的分析
第2章 軍事的抑止力の危うさ―殺人を命ぜられた者の体験から
第3章 市民運動の視点からみた歴史的展開―「平和的生存権」という理念へ向けて
結章 安保と原発にどう向き合うか―命を大切にする見方から
補章 2011年9月11日に思う―世界的危機と克服への希望
対談 開沼博×石田雄・『「フクシマ」論―原子力ムラはなぜ生まれたのか』をめぐって
著者等紹介
石田雄[イシダタケシ]
1923年青森市生まれ。東京大学名誉教授。「学徒出陣」から復員後、丸山眞男ゼミに参加し、1949年東京大学法学部卒業。同学部助手を経て、1953年東京大学社会科学研究所助教授、1967年同教授。1984年定年退職後、千葉大学教授、八千代国際大学教授を歴任。その間、ハーバード大学、エル・コレヒオ・デ・メヒコ(メキシコ)、オックスフォード大学、アリゾナ大学、ダル・エス・サラーム大学(タンザニア)、ベルリン自由大学などで研究・教育にあたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
2
図書館でこのテーマこそ、今の日本の選挙の争点になると思える内容だったと借りた。アメリカの影がちらつくTPPも沖縄問題とつながっている。経団連米倉会長もアメリカ企業とつながっていることから、結局、アメリカとの関係が日本人のいのちを脅かしているのである。安全保障としての食料、エネルギー、保険、環境、労働、知的財産権といった24分野のTPPに通底するのは、人間の安全保障の確保が難しくなることである。著者があとがきで激しくメディア批判しているのは、日本人、殊に福島や沖縄の人びとの苦しみを伝えきれていないことだ。2012/11/20
ばん
2
安保と原発というのは、あくまで違う問題である。だが、その二つを比較することで、この社会が陥りがちな、「典型的議論」の問題や責任論と犠牲の問題が浮かび上がる。一体何を政治に求めて、どうやって生きるのか、という問いには、その前提として「命」の問題がある。 「命」の問題を考える時、僕はいつも思い浮かべる言葉があります。「諸君、命は守るものか、燃やすものかどちらか考えたまえ」命は真の「聖域」です。この著者は齢88にして、戦前戦後を生きた社会学者です。こうした方の話を私たちはちゃんときくべきだと思いました。2012/06/21