内容説明
現代は「政治的な教育が可能になった時代」であると同時に「政治に関する教育が必要になった時代」でもある。「現代社会や政治についての認識を深めない教育」をどう変えればよいのか。
目次
第1章 対立の構図
第2章 自己と他者/法と道徳
第3章 政治と教育
第4章 学校・家庭・地域はどのような影響を受けるか
第5章 敵は味方である
第6章 マイナスになる「愛国心」
第7章 不透明な時代のための「政治教育」
おわりに 改革案よりましな現行の教育基本法
著者等紹介
広田照幸[ヒロタテルユキ]
1959年、広島県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。南山大学助教授などを経て、東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は、教育社会学・社会史。著書に、『陸軍将校の教育社会史』(世織書房、サントリー学芸賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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katoyann
13
教育基本法改正の危険性について、改正後に危惧されるシナリオを想定しながら論じた内容である。国家が法律に「愛国心」を書き込み、教育内容として規定することになれば、グローバリゼーションの時代に反し、自国中心主義的で排外主義的な発想を持つ人たちが増え、「国益」に反する結果を招くことになるだろうと警告している。また、法律で徳目を書けば、教育を通して過剰な同調主義が社会に蔓延し、不正が生じても批判をしなくなるといった具合に、健全な政治社会が機能しなくなると警告している。予想はその通りになった。著者渾身の力作である。2021/02/24
たろーたん
4
「日本人は愛国心がないのか?」NHK放送文化研究所(2004)を見ると、「日本に生まれてよかった」と思う人は、1973年から常に95%ほどいるし、「古い寺などへの親しみ」に関しても常に85%ほどいる。愛国心を注入するまでもなく日本人は愛国心があるのだ。1999年の真鍋一史「国際比較調査『国への帰属意識』」『放送研究と調査』によると、「とても愛着がある+まあ愛着がある」人の割合は、日本は95%であった(英国70%と米国81%)。「愛国心不足」よりも「愛国心の過剰」の方を諫めた方がいいかもしれない。(続)2023/10/16