出版社内容情報
フランスの都市文化政策は、どのような社会の実現を目指し誰によって切り開かれてきたのか?「共治」は文化を通していかに可能か?20世紀後半のフランス地方都市における文化政策の展開は、
どのような社会の実現を目指し、 誰によっていかに切り開かれてきたのか?
市民の自発性と創造性に基づいたガヴァナンスは、文化を通していかにして可能か?
文化をめぐる「共治」の成立と「実践」のプロセスを解明する。
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日本における都市文化政策への関心は、「創造都市論」が脚光を浴びた二〇〇〇年代前半に飛躍的に高まった。以後はフランスに関しても、文化省の政策よりもむしろ地方都市自治体の文化政策が注目された傾向がある。……活気あふれる各地の様子が伝えられ、産業構造の変化による地域経済の深刻な衰退から、積極的な芸術文化政策を主軸とする都市戦略で再生を果たした事例として参照された。だが、自治体予算総額の一割以上を占める多額の文化支出が何故行なわれるようになったのか、公共空間に大胆に芸術創造を位置づけて都市の様相を変化させる施策はどのような思想から生まれたのか、また、こうした自治体の政策がどのような制度に支えられて成立し、どのような実施体制で行われているのか、といった諸点にまで踏みこんだ研究は、これまでに行われていない。本書は、こうした問いに具体的に応えようとする。本書のもうひとつの企図は、文化政策を動機づけるパラダイムそのものを再考することにある。……(「まえがき」より抜粋)
〈主要目次〉
序 章
第一章 自治体文化政策創成期の政策理念と市民社会
第一節 地域市民社会と自治体政府
第二節 自治体文化政策の草創期
第三節 政策理念をめぐる議論
第四節 活動家たちの動機
第五節 文化的発展の理念と自治体文化政策の創成期
第二章 一九七〇年代革新自治体の実践と理論
第一節 一九七〇年代の中央政府方針、自治体との協力制度
第二節 一九六八年 「五月革命」 と文化の定義
第三節 都市における文化行動 ─革新自治体の政策実践
第四節 文化行動機関の活動と議論
第五節 実践者たちの議論
第六節 政治的選択としての自治体文化政策
第三章 第一次地方分権化改革における制度設計
第一節 ミッテラン政権成立前後の文化政策ヴィジョン
第二節 第一次地方分権化改革と自治体文化政策を支える制度
第三節 文化の分権化を担った自主管理派の構想
第四節 文化省方針の変容と葛藤
第五節 「使命の行政」が結んだ文化省と自治体の関係
第六節 文化の分権化制度設計の企図と蹉跌
第四章 地方分権化と欧州統合のなかで
第一節 経済発展の単位としての都市と地域
第二節 都市文化政策の複合化
第三節 自治体文化政策の都市戦略化
終 章 都市文化政策の課題
第一節 フランス都市文化政策の歴史的展開
第二節 文化的発展の課題意識の比重変化
第三節 今後の研究課題
長嶋 由紀子[ナガシマ ユキコ]
著・文・その他
内容説明
20世紀後半のフランス地方都市における文化政策の展開はどのような社会の実現を目指し、誰によっていかに切り開かれてきたのか?文化をめぐる「共治」の成立と「実践」のプロセスを解明する。
目次
第1章 自治体文化政策創成期の政策理念と市民社会(地域市民社会と自治体政府;自治体文化政策の草創期 ほか)
第2章 一九七〇年代革新自治体の実践と理論(一九七〇年代の中央政府方針、自治体との協力制度;一九六八年「五月革命」と文化の定義 ほか)
第3章 第一次地方分権化改革における制度設計(ミッテラン政権成立前後の文化政策ヴィジョン;第一次地方分権化改革と自治体文化政策を支える制度 ほか)
第4章 地方分権化と欧州統合のなかで(経済発展の単位としての都市と地域;都市文化政策の複合化 ほか)
終章 都市文化政策の課題(フランス都市文化政策の歴史的展開;文化的発展の課題意識の比重変化 ほか)
著者等紹介
長嶋由紀子[ナガシマユキコ]
東京大学大学院人文社会系研究科研究員。博士(文学)。専門は文化政策学、文化資源学。お茶の水女子大学卒業後、モンペリエ第三大学留学(仏)。在日フランス大使館勤務、早稲田大学研究助手、パリ・ナンテール大学客員研究員等を経て、2016年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。日本の自治体の文化政策形成過程に数多く関わる。現在、共立女子大学、昭和女子大学、および早稲田大学の非常勤講師を兼任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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