出版社内容情報
いかに戦争の中でメディアは編成を新たにさせられ、表象システムの中で戦争は遂行力を獲得し、戦争と表象のあいだで芸術はその様態を変化させてきたか。
20世紀は戦争の絶えることなき世紀として終わり、21世紀もまた新たな次元の戦争の連鎖によってその幕をあけた。本書は日本国内外の研究者25人の多角的な視点による議論を通して、20世紀におけるこの「戦争と表象/美術」問題に新たな議論地平をひらくとともに、21世紀の事態に立ち向かう理論的視座を探ろうとするものである。
Session ・日露戦争から15 年戦争へ
Session ・アジアと日本
Session ・第2次世界大戦期・ 日本という国家と表象
Session ・第2次世界大戦期・ それぞれの国家と表象
●著者紹介
長田謙一、一ノ瀬俊也、安松みゆき、五十殿利治、水沢 勉、丹尾安典、池田 忍、蕭 瓊瑞、ブリッジ・タンカ、シュテッフィ・リヒター、若桑みどり、久留島 浩、木村理恵子、河田明久、澤田佳三、森 仁史、五十嵐太郎、ピーター・ B・ハーイ、金子 淳、吉見俊哉、鴻野わか菜、上村清雄、小沢節子、ウルリケ・ユライト、三宅晶子(執筆順)
感想・レビュー
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ラガードー
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「ナチス政権時代に、美術品として作られた訳ではないが、今となっては美術に見える」ものの紹介が興味深い。労働を賛美するポスター、近代的にデザインされた家や車や工場や道路。これらは機能性を求めている上、「芸術的修辞が凝らされてい」たそうだ。時代背景や芸術政策にも言及があり、そこを政治・歴史だけでなく美術の視点で見るのが新鮮。このほか、頽廃芸術、(以下ドイツに限らず)植民地の博物館、戦中の美術作品、空襲被害を描いた絵など多岐の話題と視点を集めてはいるものの、こちらは統一感に欠け一般論の延長にしか見えず。2016/05/06