内容説明
看取り、看取られるすべての人に贈る、高千穂の土俗を舞台に描く血と救済の物語。渾身の書き下ろし長編小説。
著者等紹介
高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958(昭和33)年、宮崎県高千穂町生まれ。法政大学文学部中退。1999年に上梓した『火花 北条民雄の生涯』(飛鳥新社、のち角川文庫)で第31回大宅壮一ノンフィクション賞、第22回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほうき星
12
作家が、父親の最後を看とるまでの物語。子供が親を見送る事は誰にもやって来る。闘病から最後までの様子は一気に読ませるほどの力があった。いつか私にも来るのであろう。冷静にその時を迎えられるのか、私にはわからない。切なかった。2020/01/13
よきし
5
タイトル通り、父を看病し、その死を看取り、季節が一巡りするまでを繊細な心の機微のままに描き出した作品。母の父への強すぎる愛情と失うことへの恐怖に慄きながら、母の「女」の部分に言葉をかけられないライターの主人公。寡黙な父、雄大な高千穂の自然とそこに生きる人々。いかに生き、そして死ぬのか。死にゆく人を見送るのか。生きているからこそ生々しい葛藤がある。愛しているから、気持ちが昂ぶって許容できなくなる。幼き日の悔恨を抱え、父を看取りながら自分の生きてきた道を振り返る物語は、その最後にさっと明るい光に包まれる。2012/09/06
cyunkiti
3
良い水のように心全体にじわりと沁み込む文章。読み終わると、自分・親・子ども・共同体の人たち、故郷と全てが渾然一体となって何か大きな生命体の一部として生きてるんだ、という感覚に打たれる。素晴らしい作品。2010/01/19
ロピケ
3
BSの番組で紹介されていて、著者が宮崎出身の方で、読んでから高千穂の生まれと知りました。自分の親も肺がんの治療をしていたので、ひとつひとつを我が身に立ち返って読むようでした。自分の死は自分だけのものと簡単に考えていたけれど、家族の思いなどほかの事情にも影響されることもあるんだと気づかされました。2009/10/03
soran
3
ノンフィクションかと思って読みはじめたら見事な私小説というかそんなカテゴリーを超越したすごい作品だった。父の死をひたと見据えながら、父を、自分を、祖父母を、曾祖父母を、そして一族を育んだ故郷を濃密に語る。親と子という血肉でつながった関係の切りたくても切れないものを壮絶かつしみじみと描く。「とかとんとん」のお父さんの人物像が味わい深く、お父さんを愛し抜いてすんなり逝かせることができないお母さんの業がやるせない。この人があんな素晴らしい中上健次論書いたのもわかる気がした。2009/08/26