内容説明
「風の吹くまま気の向くまま、寅さんのように自由に生きられたらなあ、でも寅さんってなぜか切ないんだよな」。国民的アイドルともいえる寅さん。27年間で全48作品におよんだ「男はつらいよ」シリーズはギネスブックにものる世界でも稀な長寿作品である。単純な筋立て、マドンナにいつも振られる寅さんに、なぜ多くの日本人が魅せられ、正月とお盆には200万を超える人々が映画館に足を運んだのか。この魅力の謎に挑むため、4人の社会学者が6年間にわたり全作品を分析、その秘密を明らかにする。寅さんの中に写し取られた日本人のパーソナリティーや人間関係とそこから浮かび上がる社会心理を通して、人々が高度経済成長を背景に漠然とした不安の中で何を求め、寅さんに思いを重ねていったのか、その秘密に迫る。最終作品の公開から10年、寅さんファンはもとより、普通の日本人にとっても必見の書。
目次
日本人の社会心理と「寅さん」
「男はつらいよ」シリーズの構成と特色
「男はつらいよ」シリーズの時代的背景と地域性
「男はつらいよ」を現代の若者はどう受けとめたか?―『寅次郎あじさいの恋』鑑賞の感想文より
「男はつらいよ」に見る癒しと鎮めの効果―『寅次郎あじさいの恋』鑑賞の前と後
大学生「男はつらいよ」を観る
「女もつらいよ」?
おしゃべりでお節介な男
「それを言っちゃおしまいよ」とは…
「寅さん」における「人間」的成熟への願い〔ほか〕