内容説明
中世の地中海貿易に替って、ヨーロッパの食糧不足を背景に16世紀以来、オランダとバルト海地方の穀物貿易がアムステルダムを中心に勃興した。それは“母なる貿易”として近代貿易システムの源泉となった。オランダはバルト海貿易を基盤にマルサス・サイクルから離脱し、近代において初めて持続的発展を成し遂げた。近世商業の特徴は情報伝達の遅さ、船の難破や商品が届かないことに象徴される不確実性にあるが、近代になると通信手段の発達、貿易の必要日数の減少、輸送コストの低下、保険制度の発達により、それらの不確実性は減少する。また近世商人は安定した取引のために親族や同じ宗派の人々など顔見知りの関係を重視したが、近代への転換に伴いインパーソナルな関係が強まっていった。本書は商人活動、輸送費、情報、保護費用など取引費用に多面的な視点から光をあて、貿易輸送の効率性と費用の実態を考察、その全体像を初めて明らかにした画期的業績である。
目次
第1章 コルネリス・ピーテルスゾーン・ホーフト(1547‐1626年)―「拡張の時代」における商業の担い手
第2章 バルト海域地方からの穀物輸出における大波動
第3章 商品集散地アムステルダム
第4章 市場組織と企業
第5章 情報と代理人
第6章 オランダ商船隊と輸送費
第7章 海上のリスクとバルト海貿易・海運業委員会
第8章 アムステルダムのサーヴィス部門
第9章 ウィレム・ド・クレルク―混乱期の委託事業
著者等紹介
玉木俊明[タマキトシアキ]
1964年生まれ。1993年同志社大学大学院文学研究科文化史学専攻博士課程単位取得退学。1993‐96年日本学術振興会特別研究員。1996年京都産業大学経済学部専任講師。現在京都産業大学経済学部助教授
山本大丙[ヤマモトタイヘイ]
1969年生まれ。2002年早稲田大学大学院西洋史専修博士課程単位取得退学。2003年早稲田大学第二文学部助手。1997‐98年、アムステルダム公文書館に留学。現在早稲田大学・和光大学非常勤講師
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