内容説明
迫害と殉教の歴史からキリスト教の社会基盤が形成され、その存在が認められはじめた3世紀後半、多くの信仰者が自ら隠棲の場を求めてエジプトを中心に砂漠の中での生活を始めた。かれらは過酷な自然環境とともに欲望や虚栄といった内なる自然との壮絶な戦いをとおしてキリストと出会い、真実の道を歩んで行った。本書は隠修士たちが残した、素朴な語り口のうちに深い知恵を湛える透明な言葉の数々を集めた、珠玉の作品集である。祈り、働き、聴従する、試練と悔改めの禁欲的修行は、人間の自然・本性の可能性を開花させ、キリスト教的霊性の源泉となって後世に大きな影響を及ぼした。それらの言葉と振る舞いは、喧噪と虚飾のなかであえいでいるわれわれにとって、謙遜で真に人間的な生とは何かを根源から問い掛ける。簡潔でしなやかな訳文は、本格的な解説や訳注とあいまって、人生の座右の書として長く親しまれるに違いない。
目次
アントニオス
アルセニオス
アガトン
アンモナス
アキラス
アンモエス
ニトリアのアンモス
アヌーブ
アブラアム
アレス〔ほか〕
著者等紹介
谷隆一郎[タニリュウイチロウ]
1945年生まれ。1976年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、九州大学人文科学研究院教授
岩倉さやか[イワクラサヤカ]
1977年生まれ。2000年、九州大学文学部卒業。現在、九州大学大学院人文科学府博士課程在籍
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