内容説明
歴史研究はわが国の人文研究の中でも大きな領域を占め、研究者層も厚い。しかし歴史研究の方法論や理論的・哲学的考察、さらに学説史や歴史教育論といったメタヒストリーの研究は極めて少なく、わが国の歴史研究の弱点となっている。本書は、人間が過去をどのように認識し過去と対峙してきたかを明らかにする初めての本格的なヒストリオロジー(歴史認識学)に関する画期的な業績である。人は歴史的時間をいかに認識してきたか。紀年認識と時代区分の考察により、キリスト紀年が世界標準になった理由や年表の発達が時間認識の構築に果たした意義、とくに東アジア圏で時間軸を中心に過去の知識が整理された経緯を分析、「時は流れない、積み重なるものである」ことを明らかにする。歴史的空間はいかに認識されてきたのか。歴史図像学の視点から、イメージ型世界古地図を分析して自己中心的な世界地図の意味を考察、とくに歴史地図を通して過去の知識を整理する欧米型歴史認識の特徴を解明する。また東アジア型とヨーロッパ型の歴史学の違いを規範的歴史学と認識的歴史学として捉え、それぞれの文化の固有性を考察しつつ日本の史学がその両者に関わった意味を問う。
目次
第1章 歴史という言葉に見る歴史認識と歴史意識
第2章 人は歴史的時間をいかに認識してきたか
第3章 人は歴史的空間をどのように認識してきたか
第4章 歴史叙述における規範と認識
第5章 歴史学における認識されたものの認識
第6章 歴史学における説明の構造
第7章 日本の歴史認識の特質
著者等紹介
佐藤正幸[サトウマサユキ]
1946年甲府市生まれ。1970年慶応義塾大学経済学部卒業。同大学院文学研究科修士課程(哲学)及び博士課程(史学)を修了。1976‐77年ケンブリッジ大学歴史学部大学院(国際ロータリー財団奨学生)。京都外国語大学専任講師を経て1983年山梨大学教育学部助教授、現在同教育人間科学部教授。国際歴史理論及史学史学会事務総長。国際歴史教育学会理事。この間ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジ客員フェロー(ブリティッシュ・カウンシル研究員)、イリノイ大学歴史学部客員教授などを歴任。1996年パリ・ユネスコ哲学フォーラム招聘講演者。1997年以来スイス・エラノス会議招聘講演者。2000年国際歴史学会議オスロ大会全体会主催者。その他これまで60回以上海外の大学や国際学会で講義と講演を行い、5回の国際会議を主催した。専攻は歴史認識論(歴史理論・史学史・歴史教育)
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