内容説明
「キリスト教とイスラームという二つの宗教にのしかかる歴史的負い目の回想には、何世紀にもわたる悲劇についての慰められることのない悲しみが混じっている」二つの宗教は多くの親近性にもかかわらず、文化的・思想的・軍事的対決の織りなす不幸な歴史を生きている。本書はラテン中世から現代に至る著作家のテキスト群を取り上げ、この不幸な歴史を思想的側面から分析した、初めての本格的業績である。十字軍とレコンキスタ、初のラテン語訳コーランの意義、フランシスコ会やドミニコ会の対応、クザーヌスやルターのコーラン理解と批判、啓蒙期のレッシングから植民地主義と宣教、そして現代の新しいイスラーム研究について、神学とイスラーム学をともに修めた著者が、誠実で公平な視点から見事にその全体像を明らかにする。これらの考察から著者は両宗教が互いに罪をなすりつけ合うのではなく「人は罪を犯している」という洞察に立つことこそが、未来を切り開く唯一の希望であるというメッセージを、9.11以降を生きる現代へ投げかける。
目次
1 コーランの理解するキリスト教―出会い‐誤解‐対決
2 北アフリカからスペインへ―前進するイスラーム
3 イスラーム侵入に対する西欧の最初の反応
4 ペトルス・ウェネラビリス―最初のラテン語訳コーランの発案者
5 イスラームとの対決におけるフランシスコ会とドミニコ会―四つの具体例
6 クザーヌスとルターにおけるコーランの理解と批判
7 啓蒙の時代
8 「植民地主義の影の中での宣教」
9 歴史的・批判的イスラーム研究の始まり
10 歩み寄りと隔絶の間―未解決の問題領域
著者等紹介
八巻和彦[ヤマキカズヒコ]
1947年、山梨県生まれ。早稲田大学文学部卒業。東京教育大学大学院博士課程退学。和歌山大学を経て現在、早稲田大学教授。文学博士。Wissenschaftlicher Beirat der Cusanus‐Gesellschaft(クザーヌス協会学術顧問)
矢内義顕[ヤウチヨシアキ]
1957年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程後期修了。神田外語大学助教授を経て現在、早稲田大学教授
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