内容説明
「唖然とする出来事」の前で途方にくれる詩人たちの悪戦苦闘。それでも、詩は生き残る。啓蒙的な講演を行なったり、新聞に時評を書いたりといった活動の記録。
目次
1 現代詩―その自由と困難(講演)
2 詩をどう読むか(特別授業)
3 萩原朔太郎の天才(講演)
4 詩の波詩の岸辺(詩時評)
5 火の詩、風の詩(論考)
著者等紹介
松浦寿輝[マツウラヒサキ]
詩人、小説家、批評家。1954年、東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科フランス文学専攻博士課程修了。詩集に『冬の本』(高見順賞)、『吃水都市』(萩原朔太郎賞)、『afterward』、評論に『折口信夫論』(三島由紀夫賞)、小説に『花腐し』(芥川賞)、『半島』(読売文学賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
49
詩の末尾で濁点が取れていき「すきなやつくしをつんたわ」(すぎなやつくしをつんだわ)、さらに「あす あす ちやふちやふ/あす/あ/セササランセサランセサラン」と幼児言語へ退行する西脇順三郎には驚いた。退行を方法化するなど、やはり神経症的な詩を書いた朔太郎に強く影響されているのだろうか。なるほど、詩は神経症や幼児性への先入観を軽々と越えていくのだな…と思ったあとで、本書後半の詩時評を読み、詩人達が自らの言葉との間に繰り広げる気の遠くなるような闘いを思うと、「詩は/滑稽だ」と表現した谷川俊太郎の気持もよく判る。2015/03/31
Bartleby
12
言葉が無の砂浜に打ち寄せ、また、言葉以前の人間の感情や心情が言葉を海に押し返す。そのまにまに生まれるのが、あるいはその痕跡が、世にも不思議な詩というものなのか。作者が抱いているらしいこの、詩に対する美しいイメージがそもそも一編の詩のようだ。2022/09/21
浦
8
著者の詩集を読んで現代詩が気になったが、そもそも詩が何なのかあんまり分からない。そんな自分に丁度良い、著者の現代詩についての講演や連載を集めた本。ただ、著者の現時点での現代詩に対しての考えを表しているという最後の評論はちょっと難しかった。2016/11/19
yamahiko
7
現代詩の素晴らしい入門書だと思いました。それぞれの詩に対する解説の表現も選びぬかれた詩人である著者ならではの言葉でした。2014/02/02
sk
5
現代詩入門に最適な本が現れた気がする。これほど平易に詩の本質を突く文章は、松浦ほどの人間だからこそ書けたのだと思う。詩へ入門したい人には強くお薦めする。2015/03/18