内容説明
恫喝外交をしかける欧米列強外交団、大英帝国の支援を受けた薩摩・長州のテロリズム、命を賭してわたり合った幕臣官僚たち。日本近代史を覆す衝撃の維新論「明治維新という過ち」待望の第二弾!
目次
其の1 鎖国とは何であったか
其の2 オランダの対日貿易独占
其の3 幕府の対外協調路線
其の4 幕末日米通貨戦争
其の5 官と賊
あとがきに代えて―一言以て国を滅ぼすべきもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュラフ
30
70年安保騒乱の時代に反全共闘の立場で大学封鎖解除のため大学封鎖のバリケードめがけて丸太を抱えて突っ込んだというのが、この著者の原体験なのだろう。現代からみれば全共闘の乱暴狼藉はあきらかに異様なのだが、時代の空気は公権力の介入を否定したという。おそらく著者には、世の中はたして何が正しくて、何が間違っているのか、という問題意識があるのだろう。そうした思いこそが、幕末~明治維新にかけての歴史の真実に固執させているように思える。手段を選ばずに勝ったワルたちを現代の我々は称賛するという大いなる不条理ということ。2017/07/14
とも
28
★★★☆「明治維新という過ち」シリーズ第二弾は、徳川幕府の官吏に視点を当てた作品。これまで言われてきたのは、初めて黒船を見た時に海外の進んだ技術力を突然突きつけられ、言われるがまま不平等条約を締結されたれた幕府の腰抜け外交と、それに対して近代化政策を推し進め平等条約にまで昇華させた新政府の外交を誉めそやす内容であったが、果たして幕府の行った外交は無為無策なものだったのか。自己の利のみを追求し真実の歴史を塗り替えた国内外の賊の隠した事実が明かされる1冊となっている。2021/02/20
にゃも
20
徳川テクノクラートという言葉の響きに惹かれて手に取ったのだが、これが思った以上に面白い。前半は江戸時代の鎖国政策についての見解と鎖国に至ることとなった戦国期の悲惨な状況についてが、後半は主に幕末期における欧米列強の圧力に対する幕臣たちの奮闘ぶりが書かれている。常々、薩長のプロパガンダにより幕府側が酷く貶められていると感じていたが、漸くこのような本が読めて嬉しい限りである。『青天を衝く』でお馴染みになった川路聖謨をはじめ岩瀬忠震や水野忠徳など、優秀な徳川テクノクラートたちのことをもっと知りたいと思った。2022/02/11
roatsu
19
官軍教育を受け世代を重ねた今日、虚妄だらけの歴史認識が罷り通る中で日本人が本当に顧みるべき史実を伝えたいと真摯に作品を刊行する著者の試みは素晴らしい。徳川官僚団の優秀さと奮戦のほか多数の逸話を通し、歴史とは呑気な願望や浪漫を託す余地のない、人間が持つ手段を選ばぬ苛烈で無慈悲な営みの集積であると示し、この認識を欠いた史観は本質を見誤らせ同じ失敗の繰返しに繋がると強く警鐘を鳴らす。幕末の真の英傑の一人たる小栗上野介の述懐は時代を問わず日本人の姿勢を戒めるものではないか。前著と併せ広く読まれてほしい一冊である。2016/02/05
Lila Eule
18
面白い。真実のほどはよくわからないが、薩長史観による勝者の自己都合史観は半藤一利も指摘するところ。著者の言う、グラバー商会の前身と死の商人推定、薩長の武器斡旋密輸取引の取引媒介人、英の反体制派支援の野心と米仏露の牽制の薄氷均衡、幕府の先進性・国際性、長州の原理主義の残虐性、などは、司馬小説に明治維新の心地よい人間性を楽しんでいる幕末ファンには、ハードルが高い。が、言われてみればそのようにも見えてくる。歴史小説も小説であることを今更のように思い返す。吉村昭も事実に忠実だが作者として取捨する事柄はあると言う。2016/07/20