内容説明
神武東遷は歴史的事実ではない。大和朝廷ははじめから大和に存在したのである。そしてその創設者はおそらく崇神天皇であろう…。戦前の「不敬罪発禁本」と、戦後の「天皇論」を所収。
目次
建国の事情と万世一系の思想(上代における国家統一の情勢;万世一系の皇室という観念の生じまた発達した歴史的事情)
古事記及び日本書紀の研究(総論;新羅に関する物語;クマソ征討の物語;東国及びエミシに関する物語;皇子分封の物語;崇神天皇、垂仁天皇二朝の物語;神武天皇東遷の物語;結論)
著者等紹介
津田左右吉[ツダソウキチ]
明治6年、岐阜県に生まれる。明治23年、東京専門学校(現早稲田大学)に編入学し翌年卒業、中学校の教員を務めるかたわら東洋史学の泰斗・白鳥庫吉の指導を受け「歴史は本職」との思いに至る。その後、文献批判による科学的な歴史研究に挑み、その成果として数々の著作を世に送り出し、大正9年、早稲田大学教授に就いた。昭和14年には東京帝国大学の講師も兼任するが、いわゆる津田事件により学究活動の中断を余儀なくされる。戦後、早稲田大学総長に選出されるも固辞、ふたたび研究に没頭し、昭和36年、東京の自宅で死去、享年88(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
18
著者は、明治憲法下の時代に記紀の神代の記述は物語としてはともかく、歴史的事実としては信憑性が低いということを本書で述べたことが原因で処分されたと聞いています。 天皇が古来、国家の祭司として不執政を貫いてきたことは異論はありません。官職を任命する権威はあっても政治権力は持たなかったことが、律令制が始まった7世紀以降、その立場を別の存在に簒奪されることなく1300年守ってこれた要因ではないかと思います。「健全な」天皇制の理解が、これからも日本の「王室」が継続していく秘訣ではないでしょうか2018/05/12
はまななゆみ
15
古事記・日本書紀の記述を素直に読み、史実と空想そして皇室についてそれぞれ考えられることを読みといていく。はるか昔と現在とのつながりも感じられて楽しめました。2018/07/01
讃壽鐵朗
4
「建国の事情と万世一系の思想」では、皇室の祖先はまず大和に勢力を持ち国を作り、出雲を征服した後九州の邪馬台国も征服して日本を統一したとの説である。邪馬台国九州説であり、それを大和国家が征服したという説だが現在の学会では認められていないはずだ。神武東征の話は、天皇が日の出る方角から来られたことにするために、日向から大和に到った話を作り上げたという。2021/10/14
hyena_no_papa
2
s15発禁処分となった「古事記及び日本書紀の研究」とs21「建国の事情と万世一系の思想」の二篇を収めるが、後者が大部分を占める。津田の著作は初めて読むが、戦後の日本古代史研究の礎として位置づけられると言っていいのだろう。白鳥庫吉に師事した故か邪馬台国九州説で、この比定は津田の論考の支柱の一つとなっているが、今日の情勢から見て極めて危うい。また天孫降臨や神武東征についても憶測は述べるも帰結が見えない。ヤマト王権は最初からヤマトに生じたとするのみで、それでは新たな問題を派生することになる。読了後、脱力感も。2021/09/25
ラッシー
0
発行当時不敬罪になったと聴いていたのでもっと問題になるような すごいことが書いてあるのかと思っていたけど、 今の常識から言ったら不通のことだと思う。2012/12/23
-
- 和書
- 神学論文集 - 遺稿