内容説明
モダンアートにおける“無形なもの”の過去・現在・未来をAからZまでのキーワードで読み解く事典。美を解体し形を逸脱する、異質なるものたちの諸領域を横断し、芸術理論の新地平を切り拓く論争的マニフェスト。
目次
序論 「アンフォルム」の使用価値
低級唯物論
水平性
パルス
エントロピー
結論 アンフォルムの運命
著者等紹介
ボワ,イヴ=アラン[ボワ,イヴアラン][Bois,Yve‐Alain]
1952年生。プリンストン高等研究所教授。美術史・美術批評。1990年より『オクトーバー』誌の編集委員
クラウス,ロザリンド・E.[クラウス,ロザリンドE.][Krauss,Rosalind E.]
1940年生。コロンビア大学教授。美術史・美術批評。1969年から1975年まで『アートフォーラム』誌の編集委員、1976年『オクトーバー』誌を創刊。現在まで同誌の編集委員
加治屋健司[カジヤケンジ]
1971年生。広島市立大学芸術学部准教授。美術史・表象文化論
近藤學[コンドウガク]
1972年生。美術史
高桑和巳[タカクワカズミ]
1972年生。慶應義塾大学理工学部准教授。現代思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兎乃
25
“昆虫の記憶による網膜貯蔵シェルター、及びアンテナ”に共振する内容。搾りかすのように 残ってしまった何か。なにでもない イミも カタチも ムシされ ホウチされ、そういう なにか。難解なアプローチで面白いのだけど、清水アリカ×椹木野衣の対談の方が好きだったかなぁ。ブライアン・イーノとかSPKとか 聞いてみる深夜、あるいはソウチョウ。2015/10/27
内島菫
15
モダニズム=フォルマリズムとし、それに揺さぶりをかける操作項としてのアンフォルム―無形なものの事典(操作手引き書)。(時代の制約もあるのか)本書の持つ構造主義的な色彩、クラウスの女性であることを逆手に取ったような戦略としてのエモーショナルな論調は、確かに突っ込みを呼び込む部分であろうが、あくまで本書を使用書として見るとき、そうした突っ込みもまた著者たちの望んだアンフォルム操作的な反応なのかもしれない。私は、現代アートが大人の子ども心をくすぐる探究の実験場であると見るために本書を読んだ。2019/07/10
袖崎いたる
6
高山宏の本だったかでこの本が薦められていたのやが、やっぱり美術批評って乗れないなぁ。バタイユの概念……と言っちゃダメらしいが、ともかく彼の言葉から始めてアンフォルムにまつわるイメージを寄せ集めたもの。バタイユ読みたくはなった。2022/02/07
yu-onore
3
金銀や絵具などに対する下劣で物質的な(転換されないままの)真のフェチシズムをそのままに見せる手法を、マンゾーニではなくラウシェンバーグやフォンタナを見る低級唯物論が面白い。それを聖化するボイスへの批判も。彫刻全体の均質性を乱す色彩としてのフォンタナのキッチュもそうで。さらに水平性や、モダニズム的なものに昇華しようとする中でそれを下に崩すパルス(「目玉の話」=部分対象的な操作もそう)や、マッタ・クラークにある、形を維持したがったスミッソンを越えるエントロピーなど。2021/06/30
℃
3
ほぼ半年くらい読み終わるのにかかりました。バタイユが好きなこともあり、興味を持って読みましたが、私には難解で読み終わった今も頭の中がぐちゃぐちゃととにかく詰め込んだような感じになっています。ただ断片的に理解した部分だけでも、ここで描かれているものの捉え方はとても深く、私が漠然としか感じられないことを理論的に多角的に鋭く深く捉えてくれています。また何度も読み返していきたいと思います。2015/02/03