出版社内容情報
数多の絵画、彫刻、タペストリー、写本、宝飾品…。美術館や博物館を訪れる人の大半は、目の前に展示されている美術品がそこにあることの奇跡に、気づくことはない。しかし、目の前にある作品は、いずれも稀有な幸運に恵まれた、ごくごく少数なのだ。盗難や破壊をまぬがれなかった多くの作品の残像(ゴースト)が、美術館には満ちている…。
本書は、選りすぐりの美術品が辿った、時に小説よりも奇なるエピソード――幸運か、はたまた不運か、そのいずれかで作品の存滅が決した決定的な出来事――を、作品の魅力とともに紹介する試みである。
1章DISAPPEARD――姿を消した作品 ダ・ビンチ≪レダと白鳥≫、仏王妃の首飾りなど
2章TRANSFORMED――形を変えた作品 ベラスケス≪ラス・メニーナス≫など
3章DESTROYED――破壊された作品 ≪バーミヤンの磨崖仏≫、クリムト≪哲学≫など
4章HIDDEN――隠された作品 フリーダ・カーロ≪自画像≫、ジャコメッティ≪歩く男Ⅰ≫など
5章STOLEN――盗まれた作品 ラファエロ≪若い男の肖像≫、カラヴァッジョ≪パレルモの生誕≫、ストラディヴァリウス、セザンヌ≪赤いベストを着た少年≫など
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K’s本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei-zu
21
陳列が叶うことのない「不可能美術館」。盗難等の理由により行方がしれない絵画や、911で破壊されたワールド・トレード・センターのモニュメント、劣化を防ぐために非公開にされた有史以前の壁画など。クリムトの幻の作品なんて、見たいのですけれどもね。 人に訴えかける美術は、儚さと表裏にあることを思い起こさせる。改めて、現在の私たちが後世に何をどのように残すべきかを考えさせられます。2021/06/26
Saku
12
破壊や盗難などによりもう見ることができない作品についてエピソードを交えながら観賞する。中でも美術品泥棒の母親が事件の発覚を恐れて大量の美術品を破壊した上に運河に捨てた話が衝撃的。 美術品保護の大変さに思いを馳せながら読んだ。2021/01/31
conyTM3
9
芸術の本質は模倣 ー なんて他の本にも書いてあったけれど、風化や紛失、戦争による消失で行方不明の名作を今日、目にすることができるのは贋作、模写のおかげであるとも言える。 最近ではクローンアートの制作なども積極的に行われているので、これらも数百年後には本物の代役として後世に歴史的美術芸術品の素晴らしさを伝えていってくれるのだろう。2023/02/01
らむだ
6
複製品のみが現存する作品。制作時とは違う姿で残されている作品。破壊されてしまった作品。保存のために厳重に保管されている作品や、個人蔵ゆえに一般公開されていない作品。盗まれ行方が判明していない作品。など現実の美術館に展示することが叶わぬ作品を取り上げた一冊。大判なので作品をしっかり鑑賞することができ、全ての作品がカラーで掲載されている点も有難い。2022/11/18
マカロニ マカロン
5
個人の感想です:B。消失、破壊、盗難、秘蔵などによりこの世から消えてしまった美術品を集めた写真集。もう見ることのできない展示品を集めたまさしく「不可能美術館」。1頁25cm×20cmと大きいので、美術品をつぶさに見ることが出来る。盗難、秘蔵などはまたいつか世に出てくる可能性はあるが、戦争や内乱などで破壊された美術品はもう二度と見ることが出来ない。ただ残された写真などで忍ぶしかない。カバー絵のセザンヌの『赤いベストを着た少年』は2008年に盗難に遭った。昔、中学化高校の美術の教科書で見た記憶がある。2018/09/16