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寺子屋新書
ヒーローと正義

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  • サイズ 新書判/ページ数 237p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784901330428
  • NDC分類 778.8
  • Cコード C0236

出版社内容情報

「正しいことは正しい」と信じることは正しいか?
「正義」がこれほど求められ、問われているにもかかわらず、だれもが答えを出せないでいる(出すことが正義を悪へと転換させかねない)時代。それでも、わたしたちが正義について考え続ける意味とは何か? 特撮番組の名プロデューサーとして、正義とはなにかを問い続け、正義の具現としての〈正義の味方〉ヒーローを創造し続けてきたからこそ書けた、究極の〈正義の見方〉論。

第1章 「正義のヒーロー」はどこにいる……なぜヒーロー=〈善〉なのか/ヒーローをヒーローたらしめるもの
第2章 怪獣の悪・怪人の悪……怪獣は出現する/〈人間もどき〉という悪
第3章 世界の境界……二元論的に世界を記述する/〈踏まれた痛み〉原則/善と悪は対立概念か
第4章 勧善と懲悪/都市社会の秩序……秘境から都市へ、冒険から安住へ/マナーからルールへ/功利主義社会の善悪観
第5章 「正義はひとつ」か……越境するヒーロー/一元論への移行
第6章 正義とジャスティス……〈現代正義論〉の主張/〈正義〉が問いかけるもの/ヒーローと正義

 巷間「正義の不在」なんていうけれど、昨日今日いきなり不在になったわけではなく、はるか昔から正義は不在だったのだ。
 ピラミッドの中に、当時の作業員が「最近の若い者は」うんぬんと落書きを残したという。「古を稽へて風猷を既に頽れる」とは『古事記』の序である。昔に比べて道徳は地に落ちてしまったと、奈良時代の古代人がなげいている。
 どんなに歴史をさかのぼったところで、正義なんてものはどこにも見つからない。
 普遍にして不変、かつ不偏の正義がほしいなら、わたしたちはそれを再発見するのではなく、これから発見しなければならない。
 冒頭に書いてみた、「低下するモラル、激増する少年犯罪、混迷の世界情勢」みたいにいう人は多いけれども、「おれのモラルは低下している」とか「おれの犯罪が激増している」などという人はいない。つねに、だれかよその人の〈悪〉が増大しているのであり、自分の問題だとは思う人はだれもいない。
 モラルは低く、少年犯罪は増え、世界情勢は混迷││はるか大昔から、ずっとそうなのであって、昨日今日「低下」したり「激増」したわけではない。
 そのように感じるとしたら、それは、「だれかよその人の問題」だと思っているからなのだ。ポルノ規制を求める人は、だれかよその人がポルノを見ると悪影響を受けると主張する。「おれがポルノを見たら、何をしでかすかわからないぞ」という人はいない。そのほうが、よほど説得力があるにもかかわらず。
 正義だの道徳だの倫理だのをめぐる言説は、そうして、つねに〈だれかよその人〉の問題でありつづけ、性悪説でありつづけ、わたしたち大衆を管理したい側にとって都合のいい裏づけでありつづけてきた。
 もういいかげん、そうしたドロ沼の悪循環からは脱却してもいいころだ。わたしたちは、わたしたち自身の問題として、〈正義〉を見つめなおしていこう。

「平成仮面ライダー」シリーズ「美少女戦士セーラームーン」など数々の特撮番組を手がけてきた名プロデューサーが語る究極の正義論!

内容説明

“正義”を口にすることは、人を殺し、“正義”を口にしないことは、自分自身が殺されてしまうことだ―「正義とは何か」という問題が形而上学的な抽象論ではなく、わたしたち自身の死活問題になってしまった現代。わたしたちは、わたしたち自身の問題として“正義”を見つめなおしていかなければならない。特撮番組の制作を手がけ、正義の具現としてのヒーローを創造しつづけてきたカリスマ・プロデューサーが、ヒーローを素材に、現代社会の問題を深く鋭く切りとり、ラディカルに論じる究極かつ実践的な“正義”論。

目次

第1章 「正義のヒーロー」はどこにいる
第2章 怪獣の悪・怪人の悪
第3章 世界の境界
第4章 勧善と懲悪/都市社会の秩序
第5章 「正義はひとつ」か
第6章 正義とジャスティス

著者等紹介

白倉伸一郎[シラクラシンイチロウ]
1965年、東京生まれ。1990年、東京大学文学部第三類卒業。東映株式会社テレビ企画制作部プロデューサー。『真・仮面ライダー/序章』『恐竜戦隊ジュウレンジャー』『超光戦士シャンゼリオン』など、特撮番組の制作を多数手がける。『仮面ライダーアギト』など平成仮面ライダーシリーズはブームとなった。1997~99年テレビ朝日に勤務、『研修医なな子』『チェンジ!』等を手がけるなど、幅広いジャンルでも活躍。2004年現在、『美少女戦士セーラームーン』が放送中。「世界のメタファー」という点が共通する、とオブジェクト指向プログラミングについて「Software Design」誌、「C‐Magazine」誌で連載を担当した経験も持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

トラシショウ。

21
積読消化。長いこと読まねばと思っていた課題図書を宿題として読む。特撮番組製作会社にて数多くのヒーローの誕生に立ち会って来た敏腕プロデューサーによる、多種多様な視点から検証する「ヒーロー」と「正義」の在処、在り方を問いかける多大な含蓄に充ちた内容。一口に言って難解。基本的に殆どの事柄は最終的に語られる主題の為の言わば御膳立てに等しいが、そのそれぞれが御膳立てのレベルを越えて思索したくなるものが多く、読み終えるまでにかなり意識して咀嚼しないと単に読み飛ばしで読み終えてしまうからだ(以下コメ欄に余談)。2016/05/25

緋莢

19
「正義」の不在が叫ばれる現代。わたしたち自身の問題として「正義」を見つめなおしていかなければならなくなっている。「正義の具現」であるヒーロー、そのヒーローが活躍する特撮番組を多数手がけてきたプロデューサーが、現代社会の問題を鋭く切り取り、「ヒーロー」について考察する。2016/02/12

光心

6
ヒーローと正義について、200頁余りでものすごい濃い話を読めた。出来れば、『正義』について考えている人には読んで欲しい良書であると思う。 ざっくり言えば、「境界」を作ること、つまりは二元論的に世界を区分し、自分の側でない方の存在がその「境界」を越境することでその存在を『悪』と定義し、その存在の対置として初めて自分の側を『正義』とみなすのである。怪獣は向こう側から来る名状しがたい存在、怪人は向こう側とこちら側の両要素を持つ両義的存在ゆえに、こちら側の存在だとこちら側が認識しない限り『悪』となる。2017/11/25

METHIE

5
平成ライダーを考える上で大変ためになる本、それを通り越して正義という現実にもあるものに対し真摯に考えている。2012/03/31

2兵

3
今や「ニチアサ」と呼ばれる毎週日曜朝に放映の特撮ヒーロー番組プロデューサーが書き記した正義論。東大卒のインテリでもある著者によって、大真面目かつ非常に理論的に論じられた内容であり、番組そのものの裏話やメイキングについての記述などはあまり無い。二十年前に書かれた本であることから、現在とは事情が異なる記述が存在していたり、一部に著者の独断と思しき論述がある(桃太郎がお爺さんお婆さんに拾われなければ、鬼ヶ島に流れ着いて鬼と同じになる、など)のが気にはなったが、面白かった。2024/01/14

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