内容説明
沈みそうな紙の船でただよう主人公。湖面に浮く灰色の枯れ葉の中に、赤い木の葉が、一枚。日本で初めて翻訳された、ショーン・タンの絵本が大型絵本になりました。
著者等紹介
タン,ショーン[タン,ショーン][Tan,Shaun]
1974年、オーストラリアに生まれる。10代からSF作品の挿絵を手がけ、The Illustrators of the Future Awardをはじめ、オーストラリア児童図書賞の絵本部門銀賞を“Memorial”(2000)、“The Lost Thing”(2001)、“The Red Tree”(2002)で3年連続受賞。ボローニャ国際絵本原画展の最高賞であるラガッツィ賞を、“The Lost Thing”(2001)と“The Arrival”(2007)で受賞
早見優[ハヤミユウ]
14歳までグアム、ハワイで育つ。1982年歌手デビュー。1996年に結婚。二人の女の子のお母さん。現在は歌手、女優業のほか、国際感覚を活かして多岐にわたり活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
194
辛い気持ちを吐ける人は、近くにいますか。朝が来れば一日はいつものように始まります。誰か私のことを理解してくれるかしら。…どうして心は冷めているの。沈みそうな紙の船に悲しみの波が押し寄せてきます。私はいったい何者なの。なぜここにいるの。この世界で何をすればいいの。そして夜が訪れ、いつものように一日が終わります。…世界が灰色に染まっても、私は今ここにいる。今は見えないものが見えてくる。ほら、目の前には希望のレッドツリーが私を待っている。最悪も最高も求めないから。小さな幸せでも十分、心を穏やかにしてくれるから。2021/07/16
のっち♬
153
鬱屈とした不安と焦燥に駆られる主人公の1日。うつ病経験に基づいて製作されただけに世界観はダーク、そして脅迫的かつ誇大妄想的。螺旋的な苦しみなどうねりの画力も既に凄みがあり、激らせたデフォルメのアイデアを童心に立ち帰りつつありったけ試してみた印象。文字なし一歩手前は、『ロスト・シング』と『アライバル』を結ぶ作品としても興味を唆る作風。本作は全ての作画ページに希望の象徴『レッドツリー』の葉が隠れるように描かれている。所々でやや難易度を上げてみたり。幸せは苦しみの隅っこで静かに育ちながら自分を待っていたりする。2022/06/28
MI
111
自分って一体何者なんだろう?何かに期待しても変わらない、楽しいことはすぐに通り過ぎていく。とても考え深い絵本。ショーン.タンの独特な世界観に魅了された。何者かわからないけれども1日がはじまり、そして終わる。立ち止まって考えてみる。不条理なもとも嬉しいことも何をしても日々は過ぎていく。早見優さんの訳の絵本。2023/07/05
☆よいこ
108
大人絵本。「ちょっと最悪から ものすごく最悪へと」いつもの毎日がはじまる。暗い顔で部屋から出て辺りを見回すと絶望ばかり、どこへ行けばいいのかわからない少女はひとりぼっちで佇む。ずっとそうやって毎日が続いていくと思っていた。「その時 突然 目の前にあったことに気づく」▽繊細なタッチで描かれる心象風景。ショーン・タンのイラストは暗いイメージでも、多くの情報に溢れている。どこかに何かが隠れ潜んでいるようだ。2021/04/18
イスタ
73
何人かの読友さんがお薦めしていたので。図書館で探してもらったら、これ1冊しかなかった。わぁ~この世界観とても好きです。排他的で刹那的な独特の絵。文も絵と同化してるし。そしてラストにポンと光が灯る感じ。他の絵本も読まなくちゃ。教えてくれてありがとうございます。2020/11/29