内容説明
野に親しみ、野にあって成長を遂げた、多感な自然児の系譜を辿る分身たる書物の群れ。創元社世界少年少女文学全集からはじまり、長い年月をかけて読まれ綴られ篩い分けられた59篇。時代を映す精神の軌跡。
目次
机のそばに図形が坐っていた 新旧『カフカ全集』
処女懐胎 『ペンタメローネ』
幸福なコキュ 『ボヴァリー夫人』
ゲイ・スタディーズの一里塚 『実践するセクシュアリティ―同性愛/異性愛の政治学』
時代は変わる 『“青年”の誕生―明治日本における政治的実践の転換』
言語化された安川加壽子のピアニズム 『翼のはえた指―評伝安川加壽子』
意志と情熱がほとばしるフィルモグラフィ 『映画監督増村保造の世界―“映像のマエストロ”映画との格闘の記録 1947‐1986』
名訳詞華集に託された祖国への思い 『金素雲『朝鮮詩集』の世界―祖国喪失者の詩心』
亡命人生をも愛した不屈の映画人 『ベーラ・バラージュ―人と芸術家』
はざまにいる容疑者 『容疑者の夜行列車』〔ほか〕
著者等紹介
阿部日奈子[アベヒナコ]
1953年東京生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Hiro
4
どうやら詩人であるらしい、未知の著者の読書エッセイ。私の興味の範囲とは重なるようで微妙にズレた選書と趣味が新鮮で、しかもおおかたの社会通念とは異質の、孤独や放浪や性愛を肯定する姿勢をとても好ましく感じた。ベケットやフーリエや、その他大勢の作家を教えられる。残りの人生ではとても読みきれないと思う一方、このところネット中毒になりかけてすさんでしまいそうな心身の砂漠に、改めておいしい水を頂いたような気分。気を取り直して読書生活に戻ろうと思う。巻末の丁寧な紹介本リストがいい。普通は書評集でもここまではしないから。2024/01/14