内容説明
人類未踏の北極点を目指す狂熱の冒険行。屹立する氷山、酷寒の氷原、友愛と叛乱…、ヴェルヌのすべてはここから始まった!“驚異の旅”の真の出発点となった大長篇が初めてその全貌を現す、待望の新訳・完訳。
著者等紹介
ヴェルヌ,ジュール[ヴェルヌ,ジュール] [Verne,Jules]
1828年、フランス北西部の都市ナントに生まれる。二十歳でパリ上京後、代訴人だった父の跡を継ぐことを拒否し、オペレッタの台本やシャンソンを執筆する。1862年、出版者ピエール=ジュール・エッツェルと出会い、その示唆を得て書いた『気球に乗って五週間』で小説家デビューを果たす。以後、地理学をベースにした冒険小説を次々に発表した。1905年没
荒原邦博[アラハラクニヒロ]
1970年、品川区生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。パリ第四大学博士課程DEA修了。東京大学で博士号(学術)取得。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。専門は近現代フランス文学、美術批評研究。日本ジュール・ヴェルヌ研究会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
9
ヴェルヌの新訳が出るとは(抄訳はあったらしい)!『気球に乗って五週間』の次の、彼にとって初めての長編。北極点を目指す冒険物。無人島を発見し、土地を名づけるあたりは『神秘の島』を思わせるし、終盤の北極海での不思議な動物相、火山などは完全に『地底旅行』につながっている。つまり、本作には「狂気じみた変質的イギリス人」などを含め、その後のヴェルヌの傑作群に現れるモチーフの多くがすでに現れている。前半は現実的な北極物で、後半はやや夢幻的な冒険譚。英国と米国のナショナリズムを和解させる点などは、二年間の休暇にも繋がる2022/07/02
lico
2
北極点に取りつかれた男、ハテラス船長を中心とした冗長ではあるが非常にヴェルヌらしい冒険譚。随所には北極圏の地理的な特徴や当時はホットな話題だったフランクリン遠征隊のことがお得意のヴェルヌ節で語られる。越冬のために住居(まるで秘密基地!)を作る、自然動物との格闘など見どころがたくさんあるこの物語が今までほとんど顧みられることがなかったのも少し不思議に感じるが、恐らくはプロット上で人が無くなるシーンを飛ばせないこと、異様に長いこと、最後の結末等が日本のヴェルヌ需要(児童文学)とあわなかったのだろうなと感じた。2021/07/30