内容説明
地上の悲惨を超えて、ひびきつづける「夢の歌」―。3・11後の世界へ、怒りと希望を携えて、たゆまず語り続けた、最後のエッセイ集。
目次
1(「夢の歌」から;枯れ葉と「高校生」と私 ほか)
2(北京、湘西、そして新疆ウイグル;湘西の桃と桜と ほか)
3(物語る声を求めて;異界はどこにある ほか)
4(ニホンオオカミの笑い;アリとインターフォン ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
45
津島さんの遺作が続くが、こちらはエッセイ集。校正刷りを読むことなく先立たれた、とある。2000年以降の文芸誌・新聞に掲載されたエッセイを中心に古典文学や伝承文学についての本格論考も含まれ、バライェティに富む。通して読むと津島さんにとって3.11の衝撃が大きかったようだ。核を初めて勉強し始め世界へ発信するとともに、それを生んだ日本、そして近代文明を問い直していく。核については、太平洋諸島やキルギスといったグローバルな(正確には少数民族の)視点からと、女性の視点(例えば夜間電力を使って洗濯しろと提案する東電↓2016/10/02
Yuko
6
<地上の悲惨を超えて、ひびきつづける「夢の歌」-。3・11後の世界へ、怒りと希望を携えて、たゆまず語り続けた、著者最後のエッセイ集。身近で最後を見守った津島香以のあとがきも収録>今年の2月に亡くなられた津島さん最後のエッセイ集。今の私には本著の素晴らしさを簡潔にまとめるすべを持ちえていない。心の底から搾り出すかのような言葉の重み。3月生まれの著者のお母さんにまつわる豆拾いの「記憶」と娘さんのあとがきが、より深い余韻を残す。 2016/09/08
amanon
6
収録されたエッセイのうち、死の前年に書かれた物の割合が多いことに何とも言えない気持ちになる。止まるところを知らない資本主義グローバリズム。その中で虐げられる人達への著者の眼差し…例え大海への一雫程度の力しかかもしれないけれど、でも一人の作家としてどうしても言っておかねばならないことがある。それが文学の力だ。という著者の思いが本書の端々に感じられるような気がする。個人的には、日本の原発を稼働させることによって、これまで殆ど気に留めていなかったような国に被害をもたらしていたという事実に胸がつまる思いがした。2016/06/07
su-zu
5
原住民や女性など、常に弱者の立場から執筆されてきた津島佑子の絶筆随筆。本作で津島さんが心を寄せているのは、核の被害者たち。いつものように、自分自身への視線は厳しくて、無知や経済的な理由から原発に依存してきた過去の自分自身を戒め、未来に向けてできる限り声を発している。200年前、ソローの声にもっと耳を傾ける人がいたら、今はきっと違う今だと私は信じている。今津島さんの声に耳を傾ける人がもっと多かったら、未来は変わるかな?まだ変われると信じたいな。2016/10/03
林克也
5
3・11後の、津島佑子さんと娘の香衣さんとのメールを記した文章に、「忌野清志郎の歌はすばらしい」とありました。はい、そのとおりです。“天国”は無いけれど、いま、どこかで清志郎と佑子さんは出会って話をしているのだろうか。そしてその対談が発行されないかな。どこかの出版社が企画してくれないかなぁ。 もうひとつ、No more FUKUSHIMA!の呼びかけを、「軽率でした。」と取り下げたことについて。人が生きていくことと、現に今生きていることとの整合性、折り合いをつけるということの困難さ、なんだろうな。2016/06/20