内容説明
ルイジアナ州バトンルージュ滞在を経て書き下ろされた、グリッサン唯一の作家論。フォークナーを複数のアメリカへ、クレオール世界へと接続し、アメリカスの時空間に刷新された作家像を定着させる、壮大にしてエレガントな、後期グリッサンの代表作。
目次
ローワン・オークに向かってさまよう
フォークナーへの手引き
黒と白のうちで
“踏み跡”
現実、後れて来るもの
後れて来るもの、言葉
“境界”“遠方”、再び“踏み跡”
著者等紹介
グリッサン,エドゥアール[グリッサン,エドゥアール][Glissant,´Edouard]
1928年マルティニック島生まれ。詩人、小説家、評論家、思想家。現代カリブ海文学の第一人者にしてフランス領カリブ海発「クレオール」思想の代表的論客として注目を浴びる。2011年、パリにて没
中村隆之[ナカムラタカユキ]
1975年東京生まれ。フランス語圏文学研究(主にカリブ海地域文学)。東京外国語大学大学院博士後期課程修了。マルティニック島およびフランス本土(パリ)での研究滞在を経て、明治学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スミス市松
18
フォークナー作品にある〈耐えがたさ〉とは何か――ひとつには〈南部〉の共同体に蔓延する「劫罰」にあり、もうひとつはそれが「後れて来る」語りの構造にある。前者について、グリッサンは〈南部〉が奴隷制という非正統性の上に構築されたものであり、その混血化への拒絶が共同体形成に必須とされる叙事詩的世界の成立を不可能にしていることを見抜く。そしてこの苦しみの中で生きることを己れに課した作家は列挙、反復、循環を繰り返す渦巻く叙述と挫折する物語構造によって小説を〈南部〉それ自体と等しい「後れて来る」ものとして描き出した。2018/07/06
かいこ
4
ひとつの読み物として非常に優れていると思う2018/10/19
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